コラム
巡回指導対策 重要ポイント「点呼を始めとする運行管理」
最近、巡回指導の件数が増えており、巡回指導に備えて、お客様の会社の内部監査を行う機会が度々あるのですが、指導員が確認する重要ポイントに不備があるケースが、多く見受けられますので、巡回指導に向けて、やっておかなければならないポイントだけ、数回に分けておさらいしたいと思います。
今回は、実際に巡回指導が来た時に指導員が見る重要ポイントの中で点呼を含めた運行管理についてです。
ところで、近畿運輸局から公表された「令和元年度(平成31年度)自動車運送事業者に対する監査と処分結果」によると、近畿運輸局の貨物運送事業者へ監査に入る主な端緒(きっかけ)は次の通りとなっています。
適正化機関からの情報・・48件
死亡事故・・44件
労基通報・・28件
悪質違反・・18件
・・・・・
「適正化機関からの情報や通報」に基づいて近畿運輸局が動いて監査に入っているケースが最も多いということです。
(死亡事故よりも多い)
運輸局の監査に入られると、巡回指導の時の様な「3か月以内に改善してくださいね」という話では終わらず、違反に対しては車両停止などの行政処分が実施されることになります。
やはり、適正化機関の巡回指導は甘く見ずに、当日違反を指摘されないように、日頃から準備をしておくことが肝心です。
次に、運輸局が監査に入った際の行政処分に係る主な違反内容の内訳をみますと、次のようになっています。
過労防止・・811件
教育の不備・・141件
事業計画の不備・・120件
運行管理者の不備・・73件
点検の不備・・65件
・・・・
「過労防止に係る違反」が圧倒的です。
過労防止の中の内訳は次のようになっています。
点呼の不備・・308件
乗務記録の不備・・183件
乗務時間違反・・124件
乗務員台帳の不備・・99件
健康管理の不備・・82件
その他・・15件
「点呼の不備」が行政処分に係る最も指摘されている違反として挙げられているのわかります。
以上のことからもわかるように巡回指導の一番の重要ポイントは、点呼を始めとする運行管理です。
では、点呼についておさらいです。
運行管理者は、運転者がその日初めて乗務しようとするときに、対面により乗務前点呼を実施し、運転者から日常点検の報告、本人の健康状態、睡眠不足の状況、酒気帯びの有無について報告を受けるとともに確認を行い、それに対して安全を意識するために必要な指示を行わなければなりません。
これが乗務前点呼です。
点呼(対面点呼)は事故防止の最後の砦と言われるように、運転者が安全に運転できるかどうかの状況を目で見極め、安全に対して面と向かって指示が出せる最後のチャンスです。
点呼の後は、運転者に安全運転をお任せするしかありません。
適正化指導員としては、事業者が(対面)点呼をしないということは、
ドライバーの管理ができていないと判断することなります。
(対面)点呼を実施していないということは、まさにドライバーが飲酒運転をしていてもわからない。
寝不足状態で運転していてもわからない。
体調が悪いまま運転してもわからない。
ということであり、事故のリスクは一気に上がることになります。
ウチのドライバーに限って・・・・
社長さんなら誰もが、そういう思いはあると思いますが、事故は予期せずして突然起こります。
例え小さな事故でも、起きてしまえば、代車の手配、荷主への対応、被害者への対応、保険料の割増など
大変な費用、労力を強いられることになります。
万一死亡事故などの重大事故を起こしてしまったら・・・
会社の存続さえ危ぶまれる事態となることさえあります。
運輸局はとにかく事故を起こしてほしくないのです。
運行管理が適正にできているかどうかは、(対面)点呼が適正に実施出来ているかによるところが大きいとしています。
だから点呼にはうるさいのです。
(対面)点呼が適正に実施されているかどうかは、帳票類で確認されます。
点呼簿、タコグラフ、乗務記録(日報)です。
この中で、タコグラフだけは訂正が不可能な書類ですから、点呼簿、乗務記録の記載内容がタコグラフの内容と合っているかどうかを確認します。
例えば、点呼簿では点呼時間が7時00分となっているのに、タコグラフの記録では、6時50分にトラックが出庫しているという場合、これっておかしくないですか?
あと付けで、点呼簿を記載(改ざん)したのではないですか?
実は点呼を実施していないのではないですか?
という話になってしまいます。
つまり、本来点呼をしてからトラックに乗車し、出庫することになりますので、トラックが動き出した時刻が点呼時刻よりも早いというのはあり得ないわけです。
巡回指導前に、この時間の整合性をよく確認しておく必要があります。
(点呼を適正に実施していればこんなことはあり得ないのですが・・)
そしてまた、指導員は点呼簿で拘束時間を確認します。
拘束時間は1日16時間を超えると違反です。
乗務前点呼と乗務後点呼の時刻から、拘束時間が16時間を超えていないかを計算するのです。
これを踏まえて申し上げますと、自社でも実際に拘束時間が適正かを日頃からタコグラフ等でしっかり確認していただきたいのです。
そして拘束時間がオーバーしていたら、やはり対策を取る必要があります。
まずは拘束時間がオーバーしている原因が何なのかです。
運転者が原因なのか、荷主が原因なのか。
運転者が原因であれば、運転者に対する指導教育をする必要があります。
荷主が原因であれば、荷主に対する交渉が必要となります。
事故のリスクを下げるには必要な措置となります。
「そうは言ってもそう簡単にはいかないよ。」
という声が聞こえてきそうですが、実はやらなくてはならない状況になってきています。
と言いますのは、働き方改革に基づく法改正で、
2024年4月1日から、1カ月の残業時間が80時間を超えると違反の扱いとなるので、今のうちに、しっかり拘束時間の管理をして拘束時間の短縮を図っていく必要があるのです。
事故防止の観点と、労働環境改善の観点から、運輸局としては重要なこととしています。