コラム

最低賃金について

今回は、「最低賃金」についてご紹介いたします。

1.最低賃金とは

最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき
国が賃金の最低限度を定め、使用者は
その最低賃金以上の賃金を支払わなければ
ならないとする制度です。

最低賃金には地域別最低賃金及び、
特定の産業の基幹的労働者に対して適用
される特定最低賃金の2種類があります。

尚、地域別最低賃金と特定最低賃金の
両方が同時に適用される場合には、
使用者は高い方の最低賃金以上の賃金を
支払わなければなりません。

最低賃金は、厚生労働省の中央最低賃金
審議会が毎年度の引き上げ額の目安を
決めます(7月末頃)。

ここで示される目安を踏まえ、各都道府県
で審議会を開き、都道府県労働局長により
決定されます。

2.2025年度の最低賃金

中央最低賃金審議会は2025年度の最低賃金
の目安を全国の加重平均で時給1,118円に
することで決着しました。

現在の1,055円から63円の引き上げとなり
過去最大、引き上げ率に換算すると6.0%
(昨年度は5.1%)になります。

全ての都道府県で答申がなされた結果、
全国加重平均額は国の目安を上回り、
昨年度から66円引き上げの1,121円、
引き上げ率は6.3%増加となりました。

最高額は東京都の1,226円、最低額は
高知県・宮崎県・沖縄県の1,023円です。

最高額に対する最低額の割合は83.4%と
11年連続で改善しました。

地域間では最低賃金を競う傾向が強まり、
隣県との賃金格差は人口流出を招きかね
ません。

一部の県での大幅な増額の背景にはそうした
判断もあるようです。

又、発行年月日は、大半が例年10月でしたが、
25年度は20都道府県にとどまります。

準備期間を確保するため発効日を遅らせる
動きが相次ぎ、6県で越年となります。
尚、近畿地方の最低賃金(発行日)は
次の通りです。

大阪府 1,177円(10/16)、兵庫県 1,116円(10/4)、
京都府 1,122円(11/21)、滋賀県 1,080円(10/5)、
奈良県 1,051円(11/16)、和歌山県 1,045円(11/1)

3.現状と課題

インフレが進むなか、働き手の生活水準を
保つには最低賃金の引き上げは欠かせません。

他方、最低賃金の引き上げでパート労働者の
年収があがり、社会保険料の負担対象となる
「106万円の壁」に達する人が増えるとみられ
ます。

その結果が働き控えを招き、人手不足が加速
する恐れがあります。

社会保険料の負担を避けるため、働き控え
する人は多く、野村総合研究所が1~2月に
パート主婦等を対象に実施した調査では、
『夫の社会保険に被扶養者として加入するため』
が69.4%(複数回答可)で最多の理由でした。

「年収の壁問題の根底にある第3号被保険者
制度の将来的な廃止について、早急に国民の
合意を得る努力が必要だ。」

日本商工会議所などは4月、最低賃金に関する
政策提言にこう記しています。

一方、使用者側は、最低賃金近傍で働く人が
多い中小・零細企業では、人件費を増やす
余力に乏しいとの見解を示しています。

厚生労働省は最低賃金を議論する時期に
あわせ、受け取っていた時給引き上げ後に
最低賃金の金額を下回っていた労働者の
割合を影響率として算出し公表しています。

中小・零細企業では現在、5人に1人以上が
最低賃金に近い水準で働いています。

最低賃金は2000年代後半から、大きく
引き上げられました。

中小・零細企業における影響率は、20年前
(04年度)は僅か1.5%、10年前の14年度は
7.3%でしたが、24年度は23.2%となり、
直近の10年間で約3倍に急拡大しています。

法人企業統計調査をもとに労働分配率を算出
すると、24年度は資本金10億円以上の大企業は
36.8%ですが、1000万~1億円未満の中小企業は
24年度に70.2%と格差が大きく、中小・零細
企業における人件費負担も深刻な課題です。

4.今後の見通し

政府は2020年代に最低賃金を全国平均で
1,500円にする目標を掲げています。

中央最低賃金審議会の決着を受け、
石破首相は「目標に配慮いただきながら、
データに基づく真摯な議論がなされた。」と
述べました。

目標達成に必要な年率7.3%には届かな
かったものの、「年による変動はあっても、
今後更に努力していく。」と語っています。

やはり、来年度以降も最低賃金引上げ
の流れは止まりそうにありません。

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