コラム
法令の改正

令和7年6月の法改正により、ドライバーの
適切な賃金確保と業界の質向上を目指す
「適正原価制度」が導入されることとなり
ました。
現在、国土交通省はその基礎資料として
「適正原価に関する実態調査」を実施して
います。
この調査は、貨物自動車運送事業法第60条
第1項および貨物自動車運送事業報告規則
第3条に基づく「臨時報告」として実施される
ため、回答の義務があります。
多忙な中、詳細な回答は大変なご負担かと
存じますが、皆様の経営実態をありのままに
伝えることは、将来的に適正な運賃交渉を支え、
自社の正当な利益と健全な経営環境を守る
という大きなプラスの側面があります。
回答期限は令和8年2月20日(金)までです。
専用サイトでは解説動画や24時間対応のAI
相談員、FAQなども用意されていますので、
業界全体の未来を創るための重要な調査として
ご回答をお願いします。
https://www.mlit.site/
先月は、令和8年1月1日から施行された
「中小受託取引適正化法(取適法)」および、
令和8年4月1日から施行される白トラ行為に
対する規制強化、ならびに委託次数の制限に
関する規定について解説いたしました。
今月は、令和7年6月11日に公布された
「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」
について、主な今後の施行スケジュールと
制度の方向性をご説明いたします。
令和10年までに段階的に施行される改正制度
としては、主に次の3点が挙げられます。
①貨物運送事業の許可制度が、これまでの
無期限制から5年ごとの更新制へと変更
されること。
②国土交通省が告示する「適正原価」が導入
され、これを下回る運賃での運送や委託が
制限される仕組みが整備されること。
③ドライバー等の労働者に対する適切な処遇を
確保するための措置が、事業者の責務として
明確に位置付けられることです。
まず、これまで一度取得すれば無期限だった
一般貨物自動車運送事業の許可制度は大きく
見直され、令和10年頃までに「許可の更新制」
へと移行する予定です。
今後は5年ごとに更新を受けなければ許可の
効力が失われることとなり、すでに許可を
受けている事業者についても、施行日に
許可を受けたものとみなされ、定められた
期限(2~7年の期間)までに最初の更新を
行う必要があります。
更新許可の詳細な審査基準は現在決定して
おりませんが、法令遵守の状況や事業を
適切に遂行できる体制が整っているかなどが、
厳格に審査されると考えられます。
また、中小運送会社にとって特に重要な
転換点となるのが、「適正原価」の導入です。
国土交通大臣は、燃料費、人件費、安全確保に
要する費用、さらには将来に向けた適切な
投資原資などを反映した適正原価を定める
ことができるようになります。
この適正原価が告示された場合、事業者は
それを下回る運賃で運送を引き受けることや、
他社へ委託することが禁止され、不当な安値
受注を抑止する法的な枠組みが整備されます。
「適正原価」についての詳細についても
現在決定しておりませんが、荷主に対して
「法令を守るために適正な運賃が必要である」と、
明確な法的根拠をもって交渉できる環境が
整うと考えられます。
さらに、ドライバー等の労働者に対する処遇の
確保が法律上の責務として明確化されたことで、
賃金水準や労働条件の改善は、「努力目標」
ではなく「事業運営上の前提」となります。
人手不足が深刻化する中、法令を遵守し、
適正な処遇を行っているかどうかが、
今後の更新審査にも影響を及ぼしそうです。
そのため、早期の段階から人事評価制度の
構築や運用、賃金設計の見直しに向けた
準備を進めていくことが重要となります。
今回の法改正は、一貫して運送業界の在り方
そのものを見直す内容となっています。
許可の更新制や適正原価の導入により、
形式的に許可を維持しているだけの事業者や、
採算を度外視した低運賃で業務を受けてきた
従来の事業運営は、抜本的な見直しを
求められることになります。
また、貨物自動車運送事業法の目的に
「従事する者の労働環境の適正な整備」が
明記されたことで、適正な運賃の確保と
労働環境の改善を、法制度として支える
仕組みが整備されました。
これにより、労働環境の改善は「事業
継続の前提条件」へと位置付けが変わり、
運送業界全体が、持続可能性を重視した
健全な構造へ移行していくと考えられます。
ベストサポートグループでは、適正運賃を
確保するための経営体制づくりや、
会社の理念に合った人事評価制度及び
給与体系の設計などを多角的にサポート
してまいります。
法改正を不安要素として捉えるのではなく、
会社をより健全に成長させる好機として捉え、
ベストサポートグループをご活用いただけ
れば幸いです。