コラム

巡回指導対策 指導教育(初任運転者)

令和2年7月15日に近畿運輸局から公表された令和元年度自動車運送事業者に対する監査と処分結果によると、
行政処分にかかる主な違反内容として1番多いのが違反件数811件の過労防止の違反です。

そして、2番目に多いのが教育等の違反で、違反件数121件です。

このうち、74件が指導教育の違反で、67件が適性診断の違反です。

今回は、指導教育についてお伝えいたします。


事業者は、運送事業にかかる主な道路状況、運行状況、運行の安全を確保するために必要な運転の技術、自動車の運転に関して遵守すべき事項について、運転者適切な指導監督をしなければならないとされています。

自動車運送事業の運転者は、営業所を一度離れると運行中の安全の確保が運転者にほとんど全て委ねられていること、また、道路上を自家用車、歩行者等と混在して走行するため、運転者に特に高い安全意識と能力が求められます。

さらに、多様な地理的、気象的状況の下で運転するとともに、大型の自動車を運転することから、道路の状況その他の運行の状況に関する判断及びその状況における運転について、高度な能力が要求されます。

こうしたことから、事業者において輸送の安全性を向上させるために「安全教育」を積極的に実施する必要があります。
 
運行管理者は、乗務員に対して継続的かつ計画的に指導及び監督を行い、貨物自動車運送事業法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項に関する知識や、運行の安全を確保するために必要な技能及び知識の習得を通して、ほかの乗務員の模範となるべき乗務員を育成しなければなりません。
 
乗務員に対する指導及び監督にあたっては、
「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13 年国土交通省告示第1366号)に基づき実施しなければなりません。

まず特定運転者の教育の内容についてお伝えします。

特定運転者とは、初任運転者、高齢運転者、事故惹起運転者のことです。

・初任運転者とは、運転者として新たに雇い入れた者
・高齢運転者とは65歳以上の運転者
・事故惹起運転者とは死者または重傷者が生じた事故を
引き起こした者です。

初任運転者の講習の内容

① 座学・・・15時間以上

貨物自動車運送事業法その他の法令に基づき運転者が遵守すべき事項、事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な運転に関する事項等

ただし、事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差、制動距離に関する事項及び貨物の積載方法及び固縛方法に関する事項については実際に車両を用いて指導する。


② 安全の実技(添乗指導)・・・20時間以上

上記①の座学については、指導項目が12項目あります。

① 事業用自動車を運転する場合の心構え
② 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守する基本的事項
③ 事業用自動車の構造上の特性
④ 貨物の正しい積載方法
⑤ 過積載の危険性
⑥ 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑦ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑧ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑨ 運転者の運転特性に応じた安全運転
⑩ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因及びこれらへの対処方法
⑪ 健康管理の重要性
⑫ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

上記12項目の指導内容を15時間以上かけて実施するというものです。

1日で15時間かけて実施するのは大変でしょうから、現実には、2日か3日かけて実施するということになるでしょう。

歩行者や自転車、他の自家用車と混在する行動を安全に走行するには12項目すべてが大切な内容です。

国交省は、初任運転者を初めてトラックを運転する初心者と想定しています。

これまで、乗用車しか運転したことのないドライバーが、慣れないトラックを運転して、歩行者、自転車等が行き交う公道を走行するとなると、非常に危険です。

例えば、トラックの車高は乗用車に比べると高いです。

座席の位置も高いところにあるので、乗用車ならば、停車時に目の前を子どもが歩いていても運転席から確認できますが、トラックの運転席からは前方を見ても小さな子供の姿は確認できません。

身を乗り出して、下方をよく見て、初めて、確認できると思うのです。

しかし、乗用車しか運転していなければ、身を乗り出してまで、確認しないかもしれません。

その時たまたま子供がいたときにアクセルを踏んで、悲劇が起こるのです。

このような事故が起きないように車高、視野、死角、内輪差、制動距離などのトラックの構造上の特性について、あらかじめ指導教育をする必要があるのです。

トラックの構造上の特性以外にも
上記12項目すべて
トラックを安全に運行させるために欠かせない内容です。

初心者でも、安全に運転できるよう運転する前にしっかりと指導教育する必要があります。

ですから当該貨物自動車運送事業者において初めてトラックに乗務する前に実施しなければならないのです。

ただし、やむを得ない事情がある場合は、乗務を開始した後1ヵ月以内に実施すればよいこととなっています。

なお、上記のような趣旨から、当該貨物自動車運送事業者において初めてトラックに乗務する前3 年間にほかの一般貨物自動車運送事業者等によって運転者として常時選任されたことがある者は、この特別教育は実施しないで良いこととなっています。

もちろん、ほかの一般貨物自動車運送事業者等で、特別教育を受講している必要がありますが、特別教育を実施した証明の提示まで求められていません。

上記12項目の指導内容については、国交省からマニュアルが出ています。

国交省のマニュアルは→こちら
このマニュアルを使って、教育しても良いのですが、この内容そのままで、効果があるのか
正直疑問に思うところもあります。

もっと効果的なものを社内で整備しても良いかもしれません。

そして、実施した講習の内容(① 座学 ②安全の実技)を記録簿に記載して、保存する必要があります。

記録簿のひな形は→こちら

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