コラム

令和2年度自動車運送事業者に対する監査と処分結果

7月28日に近畿運輸局から

令和2年度自動車運送事業者に対する監査と処分結果

がプレスリリースされましたので、お伝えいたします。

これは、令和2年度(令和2年4月~令和3年3月までの1年間)に近畿運輸局が行った運送事業者(旅客運送事業者、貨物運送事業者)への監査と処分の結果を公表したものです。

「令和2年度自動車運送事業者に対する監査と処分結果」はこちら→

中身を見てみると、令和2年度は貨物自動車運送事業者への監査の実施件数は前年度339に対し、令和2年度は、240件でした。

また、車両停止処分、事業停止処分などの行政処分の実施状況は前年度185件に対し、80件でした。

監査の実施件数、行政処分の件数ともに、減少傾向にあるようです。

但し、前年度0件であった事業停止処分が、令和2年度については4件となっています。

これは、輸送の安全の確保が最も重要であると認識している近畿運輸局が、輸送の安全確保に支障を及ぼすおそれのある重大な法令違反の疑いのある事業者を優先的に監査対象としたことが影響していると思われます。

監査の結果、法令違反が確認されますと、ほぼ必ずと言っていいほど車両停止処分などの行政処分が科されることになります。

適正化機関の巡回指導の時のように3か月以内に改善すれば、おとがめは無しということはありませんので、巡回指導と同じだと、安易に考えていると想定外の結果となります。

さて、監査に至る端緒(きっかけ)についてお話しします。

重大事故を引き起こした」
「酒気帯び運転や無免許運転などの悪質な違反をした」
「労働基準監督署などの関係機関からの通報があった」
適正化機関からの情報提供があった」

などが端緒です。

令和2年度の端緒件数240件のうち、上記の中で最も多いのが

適正化機関からの情報」34件、

次いで「死亡事故」が27件、「悪質運転」23件、「労基通報」17件と続きます。

前年度の端緒は「適正化機関からの情報」48件、「労基通報」は28件でしたが、減少しています。

これは、コロナ禍で、度々緊急事態宣言が発出されたこともあり、適正化機関の巡回指導や労働基準監督署の抜き打ち訪問などが自粛された影響も考えられます。

そういう意味では、コロナ禍が収まり、平常に戻ると、監査につながる端緒の件数も増える可能性があります。

さて、端緒でもっとも多いのが「適正機関の情報」ですから、やはり、適正化機関から運輸局に通報されるような違反状態となることを未然に防ぎ、巡回指導を問題なく(A,Bランクで)終えることがポイントの一つであると思います。

また、巡回指導をしっかりクリアできるようなコンプライアンス遵守状況が継続できれば、実際に重大事故のリスクも下がりますので、ますます監査につながる端緒は減ることになります。

次に、行政処分に係る主な違反内容ですが、
過労防止等376件、教育等56件、事業計画等48件、点検等46件・・・となっています。

運輸局は重大事故に直結する
「過労防止」に関する違反をもっとも重視していることがわかります。

「過労防止」の中では「点呼」149件、
「乗務記録等」87件、「乗務時間等」55件、「乗務員台帳」44件、「健康管理」33件・・・となっており、過労防止の中でも「点呼」を実施しているか否かにポイントを置いているというようです。

しかし、重要性を見落としがちな「乗務記録」、「乗務員台帳」も重視しているということですので、これらの帳票類の適正な運用を日々しっかり行うことが大切です。

端緒として4番目に多い「労基通報」ですが、そもそも運送事業は、労働時間等の基準が遵守できていないとの認識があるので、労働基準監督署が抜き打ち(狙い撃ち)で、監査に訪れることがよくあります。

今、働き方改革が進んでいる状況ですが、その中で、運送事業者については、2024年4月から、年間の残業時間を960時間以内にすることが求められます。

960時間を超えると違反という扱いになりますので、3年後には今よりもさらにチェックが厳しくなることが予想されます。

そのことを見据えて、今のうちに労働時間の短縮を図ることが必要であり、そうすることで、労働基準監督署の立ち入りがあっても、対応ができ、監査のリスクを下げることにつながります。

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