コラム
令和3年度自動車 運送事業者に対する監査と処分結果
近畿運輸局から「令和3年度自動車運送事業者に対する
監査と処分結果」がリリースされましたので、
お伝えいたします。
これによると、この1年間(令和3年4月~令和4年3月)で、
臨店監査(予告なしの立ち入り監査)が123件(昨年111件・
一昨年160件)、呼び出し監査(予告ありの運輸支局への
呼び出し監査)が128件(昨年128件・一昨年176件)と
昨年度と比べると、やや増加傾向にあります。
近畿運輸局の担当官によりますと、コロナの影響で、
監査活動を自粛していた期間が長く多かったため
昨年度は監査件数が少なく、今回(令和3年度)は、
自粛期間が短く、自粛の機会も減ったため、件数が
増加したのではないかとのことです。
一昨年の数字と比べるとコロナの影響(自粛により
監査が減少)がよくわかります。
監査の主な端緒別件数を見ると、死亡事故(第一当事者)が
41件(昨年27件)、酒気帯びや無免許などの悪質違反が
15件(昨年23件)、労基などの関係機関からの通報が31件
(昨年44件)、適正化機関からの情報が41件(昨年31件)
などとなっています。
適正化機関からの情報が増加しているのは、自粛期間が
減ったため、昨年よりも巡回指導の件数が増えている影響が
あるのではないかとのことです。
さて、監査の結果行われた行政処分の状況ですが、
事業停止処分は5件(昨年4件)、事業停止にかかる
処分延日数は1551日車(昨年1062日車)、車両停止処分は
102件(昨年76件)、車両停止処分にかかる処分延日数は
6515日車(昨年4940日車)と、処分の内容は昨年度に
比べると厳しく、多くなっているようです。
行政処分にかかる主な違反内容としては、事業計画等
(無認可営業所、車庫など)が85件(昨年48件)、
過労防止等(乗務時間、健康診断、点呼、乗務記録、
運行指示書などの違反)が549件(昨年376件)、教育等
(一般運転者・特定運転者の指導教育、適性診断違反など)
が125件(昨年56件)などとなっており、その他を含めて、
合計違反件数は892件(昨年586件)に上っています。
もう少し細かくみますと、
事業計画等の違反では、営業所、車庫などの無認可営業が
挙げられているのではないかということと、
過労防止等では、点呼違反が209件(昨年149件)、
乗務時間等違反が84件(昨年55件)、運行指示書違反が
33件(昨年8件)などが目立ちます。
教育等では、一般運転者・特定運転者の指導教育違反が
94件(昨年25件)と大幅に増加しています。
これについて、担当官は、コロナで、対面での教育指導が
やりづらかったのではないかと見ています。
ただ、コロナのせいで指導教育ができなかったというのは
理由にならず、規定通り、違反として処分の対象とした
とのことです。
担当官に監査での一番のポイントをお聞きしますと、
やはり過労防止に重点を置いており、特に、点呼、
健康管理はしっかり見るとのことです。
点呼、健康管理ができていないと、管理体制が不十分である
との判断となるし、点呼をしっかり行った上で、初めて
人の管理ができると考えているとのことでした。
また、事業計画のチェックも細かくなっているようですので、
無認可車庫などの状態にならないように、早めに認可申請を
することをお勧めします。
さて、最近、コロナ自粛が解除されてきていることに伴い、
適正化実施機関による定期の巡回指導が増えてきています。
巡回指導の結果、DEランクになると、運輸局に法令の遵守
状況が悪いという判断がなされ、不要に目をつけられる
ことになります。
具体的には、DEランクが2回続くと、監査に来るようですので、
C以上のランクにとどめることが肝心です。
それと、ランクに関わらず、指摘事項があった場合は、
必ず3か月以内に改善報告をして下さい。
最近、前回(2~3年前)の巡回指導の際に、改善報告が
なかったとして、監査に入られたケースが、見受けられます。
ただ、事業者は、報告をしたはずだとのことです。
こちらは報告したつもりでも、届いていないと判断されると
監査の対象となります。
改善報告をしたら、報告が届いたかどうかも確認して
いただいた方が良いかと思います。
また、担当官は緊急事態宣言など、コロナ自粛の機会が
減ってきているので、今後は臨店監査の件数は
増えていくのではないかとのことでした。
思うような運賃を収受できない中で、コンプライアンスを
全て遵守するのはコストも時間もかかることであり、
容易なことではありません。
まずは、出来ていることと、できていないことをしっかり
分析して、1つでもできることを増やしていくことが
大事であると思います。