コラム

運転者向け指導教育12項目(1項目~3項目)

一般運転者の指導教育、初任者教育共通の指導内容である指導教育12項目
内容の具体的なポイントについてお伝えいたします。

初任運転者については、原則乗車前(特例として、運転を始めてから
1か月以内)に初任者教育(座学15時間以上と実技指導20時間以上)を
実施しなければなりません。
また、一般運転者は、1年かけて(毎年)、継続的に座学での指導教育を
実施しなければなりません。

この初任運転者の15時間以上かけて行う座学と一般運転者の1年かけて
実施する座学共通の教育内容が、「指導教育12項目」です。
なお、一般運転者とは特定運転者以外の運転者のことを指します。
特定運転者とは、初任運転者、65歳以上の高齢運転者、重大事故を
引き起こした事故惹起(じこじゃっき)運転者のことです。
初任運転者は、初任教育の受講と適性診断初任診断の受診が完了すれば、
一般運転者という扱いになります。

この「指導教育12項目」は、1年かけて一般運転者に実施するものですから、
結構なボリュームがあります。
しかし、どの項目も事故を防止するために必要不可欠な指導内容です。
ですから、(経験が浅いと想定される)初任運転者にも乗車させる前に、
12全ての指導項目を実施し、事故防止を徹底することが義務付けられて
いるのです。
ボリュームがありますから、しっかり15時間以上かけて「実施しなさい」と
いうことになっているわけです。

さて、では12項目の内容を見てみましょう。
⑴ 事業用自動車を運転する場合の心構え
⑵ 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
⑶ 事業用自動車の構造上の特性
⑷ 貨物の正しい積載方法
⑸ 過積載の危険性
⑹ 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑺ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑻ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑼ 運転者の運転適性に応じた安全運転
⑽ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
⑾ 健康管理の重要性
⑿ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
以上の様になっております。

なお、指導教育12項目はテキストがWEBサイトにUPされています。
テキストはこちら ⇒ 202301anzen_kisoku_kaisei04.pdf (jta.or.jp)

それでは、一つひとつの内容の指導上のポイントを見ていきます。
なお、動画を使うなど視覚に訴える、質問して答えてもらうなど双方向で
進めるといったやり方により、ドライバ―の皆さまの理解がより深まる
ようですので、そのような工夫をされることをお勧めします。

⑴「事業用自動車を運転する場合の心構え」

貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び
監督の指針(以下「指針」)では、次のように書かれています。

「貨物自動車運送事業は公共的な輸送事業であり、貨物を安全、
確実に輸送することが社会的使命であることを認識させるとともに、
事業用自動車による交通事故の統計を説明すること等により、 事業用
自動車による交通事故が社会に与える影響の大きさ及び事業用自動車の
運転者の運転が他の運転者の運転に与える影響の大きさ等を理解させ、
事業用自動車の運行の安全を確保するとともに他の運転者の模範となる
ことが事業用自動車の運転者の使命であることを理解させる。」

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

1)貨物自動車運送は、わが国の輸送量の9割以上を担っており、
 我々の生活に欠かすことのできないとても重要な仕事であり、
 その役割を担うドライバーの皆さまは、社会の維持・発展に大きく
 貢献している。だから、誇りをもって仕事をして欲しいということ。
2)しかしながら、大きく、重量のある貨物自動車が一たび交通事故を
 起こせば、大変な被害となるほど社会的影響が大きいこと。
3)だからこそ、プロであるドライバーの皆さまには、乗用車やバイク、
 他の貨物自動車など他のドライバーの模範となってほしいと考えているし、
 それが皆さまの使命であるということ

⑵「事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項」

指針では次のように書かれています。
「貨物自動車運送事業法、道路交通法(昭和35年法律第105号)及び道路運送
車両法(昭和26年法律 第185号)に基づき運転者が遵守すべき事項を理解させる。
また、当該事項から逸脱した方法や姿勢による運転をしたこと及び日常点検を
怠ったことに起因する交通事故の事例、当該交通事故を引き起こした貨物自動車
運送事業者及び運転者に対する処分並びに当該交通事故が加害者、被害者その他の
関係者に与える心理的影響を説明すること等により当該事項を遵守することの
重要性を理解させる。」

ポイントは以下の通りです。
1)貨物自動車運送事業法においては、点呼の実施の重要性・実施の仕方、
 日常点検の実施の方法、乗務記録(日報)の書き方、酒気帯び乗車は厳禁であること、
 疾病・過労・睡眠不足により、安全な運転ができない恐れがあるときは申し出ること
 などドライバ―に遵守してもらわなければならない項目について、指導すること
2)特に日常点検の進め方については、具体的に手順をわかりやすく指導すること。
 (初任者教育では、座学だけではなく、実車を用いて、教育を行う必要がある)
3)道路交通法では、人身事故を引き起こした時に、ドライバ―には3つの責任
 (民事上の責任刑事上の責任行政上の責任)が及び、ドライバ―自身の人生が
 大きく変わってしまうことにもなりかねないこと
4)万一交通事故を引き起こした際は、被害者を救護する等適切な行動をとれるか
 否かが、上記の責任に大きく影響してくること。逆に酒気帯び運転や危険運転
 (あおり運転など)により人身事故を引き起こせば、責任は重くなること

⑶ 「事業用自動車の構造上の特性」

指針では次のように書かれています。
「自らの運転する事業用自動車の車高、視野、死角、内輪差(右左折する場合
又はカーブを通行する場合に後輪が前輪より内側を通ることをいう。以下同じ。)、
制動距離等を確認させるとともに、これらが車両により異なること及び運搬中の
貨物が事業用自動車の運転に与える影響を理解させる。この場合において、
牽引自動車及び被牽引自動車を運行する場合においては、当該牽引自動車を運転
するに当たって留意すべき事項を、当該被牽引自動車によりコンテナを運搬する場合
においては、当該コンテナを下部隅金具等により確実に緊締しなければならない
ことを併せて理解させる。
また、これらを把握していなかったことに起因する交通事故の事例を説明すること
等により、事業用自動車の構造上の特性を把握することの必要性を理解させる。」

ポイントは以下の通りです。
1)トラックは車高、視野、死角、内輪差、制動距離において、乗用車など他の
 自動車と全く異なるということと、乗用車などと同じ感覚で運転すると事故を
 引き起こすリスクがあるということ
2)1)の内容を踏まえて、具体的にどのような違いがあるかを伝える。
 例えば車高が低い乗用車ならば、目の前を横切る歩行者に気づけても、車庫の高い
 トラックでは、気づかないことがあり、その結果、悲惨な結果となりうること、
 トラックは車長が長い為、内輪差が大きくなり、左側方の二輪車、自転車、
 歩行者などを巻き込むリスクが高いこと、トラックは死角が大きく、車線変更の
 際に側方を走行する車両等と接触のリスクがあることや、バックの際など、
 死角により事故になるリスクが高いことなど(初任運転者の指導教育の際は、
 座学だけでなく、実車を用いて、運転席に座らせ、以上の特徴を理解させることが
 義務付けられています)
3)トラックは、車体重量が重く、重心が高いなどの特徴により、衝撃力が大きく、
 重大事故につながりやすいこと、カーブでは遠心力が強く働き、横転の危険性が
 高いこと、トラックは制御が難しく雨天時などは、ハイドロプレーニング現象
 などを生じやすいことなど
4)トレーラの特性については以下の特徴について伝えること
 ・内輪差が非常に大きく、他者を巻き込みやすいこと
 ・重心が高く、横転しやすいこと
 ・死角が非常に大きく、左後方の二輪車などの発見が遅れやすいこと
 ・カーブでははみ出しが大きいこと
 ・後退時はハンドル操作が他車種とは異なること
 ・ジャックナイフ現象、トレーラスイング現象、プラウアウト現象などのトレーラ
  特有の現象があること
5)安全確認を怠らないなど適切な運転を行なう重要性を理解させるためにトラックの
 特性に起因する事故の動画など視聴が効果的です。

今回は以上、指導教育12項目のうちの(1)~(3)項目までのポイントについて
お伝えしました。次回は(4)項目以降のポイントをお伝えいたします。

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