コラム

賃金デジタル払いの解禁

今回は、「賃金デジタル払いの解禁」について
ご紹介させて頂きます。

1.令和5年4月からの法改正

令和5年4月より労働・社会保険関係法令の一部が
改正されております。

具体的には、「月60時間超の時間外労働に対する
割増賃金率50%以上の中小企業への適用」、
「常時雇用労働者1,000人超の事業主に対する
男性労働者の育児休業等取得状況の公表義務化」、
「健康保険の被保険者に支給する出産育児一時金
42万円から50万円への引き上げ」などが挙げられ
ますが、それ以外にも、「賃金を労働者の資金移動
業者の口座に支払うこと(賃金デジタル払い)の解禁」
といった、いささか聞き慣れない法改正もなされました。

2.資金移動業者

ここで言うところの資金移動業者には「PayPay」
「楽天Pay」「d払い」「LINE Pay」
「au Pay」などがあり、運用を開始するには
いずれの業者も厚生労働大臣の指定を受ける必要が
あります。

ちなみに、「PayPay」は2018年10月5日に
ソフトバンクとヤフーが共同でスタートしたスマホ
決済サービスで、デジタル決済の分野では約55%の
圧倒的シェアを占めています。

無論、あくまで希望者のみが利用するシステムですから
賃金のデジタル払いを希望されない場合は、従来通り、
銀行口座等からお給料を受取って頂くことができます。

3.賃金デジタル払いの注意事項

尚、賃金デジタル払いに際し、ご留意頂きたい内容は
次の通りとなります。

1)賃金デジタル払いを事業所に導入する場合、雇用主と
 労働者間で労使協定を締結して頂く必要があります。

2)同口座は、「預金」目的ではなく、支払や送金を目的に
 使用するものですから、支払見込みに応じた金額を
 受取るようにして下さい。(1日当たりの払出上限金額
 などの設定があり、受取れる金額にも上限があります)

3)口座の上限額が100万円以下に設定されるため、
 上限を超えた金額は、あらかじめ指定した銀行口座に
 自動的に振替えられることになります。(振替手数料
 発生する場合もありますので、事前にご確認下さい)

4)月に1回は、払出手数料なしに、口座から残高を
 出金することができますが、念のため、ご利用になる
資金移動業者より、払出方法など、取引条件を
ご確認下さい。

5)口座の残金は、最後の入出金の日から、10年間
 申し出などにより、払い戻しが可能となります。

4.スタートはいつから

現在、各資金移動業者より、厚生労働大臣に対して
指定に係る申請がなされており、厚生労働省内で
審査が進められているようですが、指定許可には
更に、1~2ヵ月は要すると思われます。

資金移動業者が指定を受けて初めて、事業所内での
労働者への説明や労使協定の締結といった段取りが
可能となりますので、実際の運用が開始されるのは
どんなに早くても7~8月頃になるでしょう。

いずれにしましても、私たちの生活とデジタル化が
切っても切り離せない関係になりつつあるのは、
疑う余地のないところかもしれません。

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