コラム

運転者向け指導教育12項目(7項目~9項目)

今回は、一般運転者の指導教育、初任者教育共通の指導内容である
指導教育12項目の内容の具体的なポイントについてお伝えいたします。
前回までで、指導教育12項目のうち(1)~(6)項目までのポイント
についてお伝えしました。
今回は(7)項目以降のポイントをお伝えいたします。
改めて、12項目の内容を見てみましょう。

⑴ 事業用自動車を運転する場合の心構え
⑵ 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
⑶ 事業用自動車の構造上の特性
⑷ 貨物の正しい積載方法
⑸ 過積載の危険性
⑹ 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑺ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑻ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑼ 運転者の運転適性に応じた安全運転
⑽ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
⑾ 健康管理の重要性
⑿ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

では、7項目目からお伝えいたします。

⑺ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況

貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の
指針(以下「指針」)では、次のように書かれています。

当該貨物自動車運送事業に係る主な道路及び交通の状況をあらかじめ
把握させるよう指導するとともに、これらの状況を踏まえ、事業用自動車を
安全に運転するために留意すべき事項を指導する。

この場合、交通事故の事例又は自社の事業用自動車の運転者が運転中に
他の自動車又は歩行者等と衝突又は接触するおそれがあったと認識した
事例(いわゆる「ヒヤリ・ハット体験」)を説明すること等により運転者に
理解させる。

道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)第2条、第4条又は
第4条の2について同令第55条の認定を受けた事業用自動車を運転させる場合
及び道路法第47条の2第1項に規定する許可又は道路交通法第57条第3項に
規定する許可を受けて事業用自動車を運転させる場合は、安全に通行できる
経路としてあらかじめ設定した経路を通行するよう指導するとともに、
当該経路における道路及び交通の状況を踏まえ、当該事業用自動車を
安全に運転するために留意すべき事項を指導し、理解させる。

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

①安全な運行を行うためには、あらかじめ、適切な運行経路を選択し、
 その経路についての情報を把握しておくことが重要であるが、
 夜間の住宅地、通学路や人ごみの多い場所の走行などをなるべく避ける、
 渋滞時に抜け道として、生活道路などの事故が発生しやすい場所の
 走行を避けるなど、安全性に配慮したルート選択が必要であることと、
 降雪、雨天などの気象情報も事前に情報共有することなど事故防止に
 つながる事前準備の大切さを伝えること。走行するルートの選択次第で、
 事故リスクは大きく変わる。

生活道路などリスクの高い道路に潜む危険については、人や自転車の
飛出しなどの動画を見せるなどして、ルートの選択次第で変わるリスク
について、理解を深めてもらう。

また、定期的に運行するルート上で、事故が発生しやすい交差点、
ヒヤリハットの多い場所などについても情報共有すること。

②貨物を積載した際に道路法上の制限(高さ、幅、長さ、重量など)を
 こえる場合に、公道を通行するにあたり、特殊車両通行許可が必要であり、
 また、道路交通法上、重量規制がある道路などを制限を超えた重量の
 車両が通行する際は、警察の許可が必要であるが、その際に許可証を携行し、
 許可が下りているルートを通行する必要があること。
 場合によっては通行時間帯の規制や、誘導車の配置が義務付けられることが
 あることなどを伝えること。

⑻ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法

指針では次のように書かれています。

強風、豪雪等の悪天候が運転に与える影響、右左折時における内輪差、直前、
後方及び左側方の視界の制約並びにジャックナイフ現象(制動装置を操作した
ときに牽引自動車と被牽引自動車が連結部分で折れ曲がり、安定性を失う現象
をいう。)等の事業用自動車の運転に関して生ずる様々な危険について、
危険予知訓練の手法等を用いて理解させるとともに、危険を予測し、回避する
ための自らへの注意喚起の手法として、指差呼称及び安全呼称を行う習慣を体
得させる。
また、事故発生時、災害発生時その他の緊急時における対応方法について
事例を説明すること等により理解させる。

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

①交通事故を招いている原因は、運転者が見ていない(見る時間が作れていない)
 ことによるものが大きく、脇見一点集中)などせず、色々なところに目を配る
 ことが、事故防止につながります。
 さらに事故リスクを下げるには、危険を予測するということも重要になります。
 具体的には、道路を利用する歩行者(特に子ども、高齢者)や自転車の事故に
 つながるような動きを予測することや気象状況、走行する時間帯によりリスクが
 どのように上がるかを予測することですが、それぞれの状況で、危険を回避する
 ためにどこを見て(例えば歩行者の動きを予測)、どのような運転(スピードを
 落とすなど)を心がけるべきかを個別の状況ごとに具体的に伝えること。
 動画を使うと伝わりやすいです。

②危険予知トレーニングを実施することで、潜んでいる危険を予測することを体感
 できます。インターネット等を通じて冊子やDVDなどを手に入れることができる
 と思いますので、そのような教材を活用するとより効果的であると思います。

⑼ 運転者の運転適性に応じた安全運転

指針では次のように書かれています。
 
適性診断その他の方法により運転者の運転適性を把握し、個々の運転者に自らの
運転行動の特性を自覚させる。また、運転者のストレス等の心身の状態に配慮した
適切な指導を行う。

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

①初任運転者は適性診断初任診断)の受診が法律上義務付けられていますが、
 受診しただけで、活用していない事業者が多いように思います。
 適性診断は、自分自身では気づきづらい、運転のクセを知ることができます。
 診断結果に出てくる感情的な傾向や自分本位で協調性に欠ける傾向などは
 事故につながりやすいとされています。
 これらの事故リスクに影響を与える自分の特性を知る貴重な機会でもあるので、
 本人に自覚していただいた上で、本人と一緒に対策を考え、事故防止に
 つなげていただくことが重要です。
②好ましい点を誉めた上で、注意されている点に注目する。注意点については、
 日頃の運転ぶりを振り返らせ、何が問題かを見つけ出すこと。
 指導者の主観ではなく、客観的な診断結果であり、注意点については、本人も
 受け入れやすいはずなので、運転傾向の改善について良いタイミングである。
 注意点に関する傾向が、事故を誘発する交通違反に繋がっているケースもある。
 各運転者の運転記録証明(過去3~5年の交通事故、交通違反の記録)を取得すれば、
 合わせて、納得性のある指導も可能となる。
 また、運転者の時間を使い、コストもかかっているので、しっかり活用すること。
(投資とみた方が良い)

今回は以上、指導教育12項目のうちの(7)~(9)項目までのポイントについて
お伝えしました。次回は(10)項目以降のポイントをお伝えいたします。

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