コラム

運転者向け指導教育12項目(10項目~12項目)

今回は、一般運転者指導教育初任者教育共通の指導内容である指導教育12項目の
内容の具体的なポイントについてお伝えいたします。
前回までで、指導教育12項目のうちの(1)~(9)項目までのポイントについて
お伝えしました。
今回は(10)項目以降のポイントをお伝えいたします。
改めて、12項目の内容を見てみましょう。

⑴ 事業用自動車を運転する場合の心構え
⑵ 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
⑶ 事業用自動車の構造上の特性
⑷ 貨物の正しい積載方法
⑸ 過積載の危険性
⑹ 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
⑺ 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
⑻ 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
⑼ 運転者の運転適性に応じた安全運転
⑽ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの
対処方法
⑾ 健康管理の重要性
⑿ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

では、10項目目からお伝えいたします。

⑽ 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法

貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の
指針(以下「指針」)では、次のように書かれています。

長時間連続運転等による過労、睡眠不足、医薬品等の服用に伴い誘発される眠気、
飲酒が身体に与える影響等の生理的要因及び慣れ、自らの運転技能への過信による
集中力の欠如等の心理的要因が交通事故を引き起こすおそれがあることを事例を
説明することにより理解させるとともに、貨物自動車運送事業輸送安全規則第三条
第四項の規定に基づき事業用自動車の運転者の勤務時間及び乗務時間に係る基準を
定める告示(平成13年国土交通省告示第1365号)に基づく事業用自動車の運転者の
勤務時間及び乗務時間を理解させる。

また、運転中に疲労や眠気を感じたときは運転を中止し、休憩するか、又は睡眠を
とるよう指導するとともに、飲酒運転酒気帯び運転及び覚せい剤等の使用の禁止
徹底する。
上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

「過労運転状態」「飲酒」「運転への過信」「焦る気持ち」「興奮状態」などの運転者の
生理的・心理的要因がどのように交通事故の発生に影響を与えているのかを認識させる
ことと、事故を引き起こす生理的・心理的要因の状況に陥らないためには、どのような
方法があるのかを伝え、理解・認識させることです。

例えば、過労運転状態に陥らないようしっかり休息をとること、飲酒が速度感覚や
危険を感じる感覚を麻痺させること、運転に対する過信が、安全運転の基本を失わせ、
無謀な運転につながること、焦る気持ちが、あおり運転やスピード超過につながり、
周りに対する配慮を失わせることなどをしっかり伝えることです。
(もちろん会社としては、ドライバーが拘束時間を超過し、過労運転とならないように、
点呼を実施するなどしっかり管理することは必須です。)

また、指導者やベテランドライバーなど身近な存在の事故体験ヒヤリハット体験などの
実体験をもとに、運転者の生理的・心理的要因がもたらす事故の恐ろしさを伝えると
理解が深まり、抑止力にも繋がります。

飲酒運転に関しては、体内に入ったアルコールが、運転に多大な影響を与えることや、
アルコールが消えるのに時間がかかる(アルコール1単位(ビール500ml、酎ハイ350ml・・)
消えるのに4時間)こと、飲酒運転が発覚した場合の運転者に対する道路交通法上の罰則
酒酔い運転免許取り消し、かつ、5年以下の懲役または100万円以下の罰金)などの
内容を伝え、「飲酒運転で事故を引き起こした運転者の手記」なども紹介すると、防止に
効果的です。

⑾ 健康管理の重要性

指針では次のように書かれています。

疾病が交通事故の要因となるおそれがあることを事例を説明すること等により理解させる
とともに、定期的な健康診断の結果、心理的な負担の程度を把握するための検査の結果等
に基づいて生活習慣の改善を図るなど適切な心身の健康管理を行うことの重要性を理解
させる。

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

健康診断は1年に1回受診させることが、義務となっております。義務ですから、実施
していなければ、違反となります。処分(車両停止処分)の内容は以下の通りです。
未受診1人・・・警告(10日車)
未受診2人・・・20日車(40日車)
未受診3名以上・・・40日車(80日車) (カッコ内は再違反時の処分)

未受診2人目から、行政処分の対象となりますのでお気を付けください。

また、運転者の勤務時間が、(頻度としては1カ月に4回以上)22時から5時の間に係る
場合は、6カ月に1回受診させる必要があります。

さて、教育の内容ですが、各ドライバーの健康診断の結果を確認しながら進めます。
自分の健康診断の結果をしっかり分析する人は少ないと思いますが、自分自身の健康
には関心があるはずです。
一般的な健康管理の話より、自分自身の健康診断の結果を見てもらいながら、話を
進めて、危機感を感じてもらえると、理解も深まり、効果的です

健康診断に記載されている各項目の数値の見方や数値に異常がある場合に、放置すると
健康や運転にどのようなリスク・支障があるかを各項目ごとに説明し、その数値を
下げるための方法を伝え、理解をさせてください。

運転の仕事は生活が不規則になりがちなので、バランスの良い食生活と、しっかり休養
をとること(夜更かし、睡眠不足にならないようにする)です。
また、適度な運動が健康維持のポイントとなります。
職業柄、以上のことを特に意識して生活することを指導してください。
運転中に体調の異常を感じたときの対処方法も伝えておくべきポイントの一つです。

⑿ 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

指針では次のように書かれています。

安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車を運行する場合においては、
当該装置の機能への過信及び誤った使用方法が交通事故の要因となるおそれがあること
について説明すること等により、当該事業用自動車の適切な運転方法を理解させる。

上記を踏まえ、伝えてほしいポイントは以下の通りです。

「衝突被害軽減ブレーキ」、「車線逸脱警報装置」などの運転支援装置の特性と使い方を
理解した運転の重要性について伝え、装置を過信して、事故に至るケースが増えている
ことを踏まえ、支援装置の限界とメーカーによる作動等の違いを明確にさせ、支援装置に
頼り過ぎた運転にならないように指導してください。

現在実用化されている自動運転機能は、運転者が責任をもって安全運転を行なうことを
前提とした運転支援技術であり、運転者に代わって車が自律的に行う完全な自動運転では
ないので、装置の機能の限界や注意点を理解させ、機能を過信せずに、責任を持った安全
運転を行なうことが必要です。

例えば「衝突被害軽減ブレーキ」の場合、当該システムのみで衝突を回避したり、安全に
停止するというものではなく、また、レーダーセンサーに汚れなどが付着している際には
システムが正しく作動しない恐れがあることなどを伝えること。

同様に、「アダクティブクルーズコントロール/ACC(定速走行・車間距離制御装置)」、
「ふらつき注意喚起装置」、「車線逸脱警報装置」、「車線維持支援制御装置」、
「車輛安定性制御装置」など会社の車両に搭載されている運転支援装置特性注意点等を
メーカーなどによく確認して、過信による事故が起きないように指導することです。

今回は以上、指導教育12項目のうちの(10)~(12)項目までのポイントについて
お伝えしました。

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