コラム

運送業界における2024年問題

今回は、目前に迫っている2024年問題対策についてお伝えいたします。

2024年問題とは、働き方改革に伴う法改正によって、適用される
トラックドライバー時間外労働上限規制」によって引き起こされる
種々の問題のことですが、運送事業者にとって特に大きな問題は、
今回の規制に対応するために、仕事量らさざるを得なくなり、それが、
業績悪化につながり、企業の存続にかかわる事態に陥るリスクがあることと、
売上の減少に連動して、トラックドライバー給料が減少することで、
ドライバーが退職する等、ドライバー不足が加速する恐れがあることです。

「トラックドライバーの時間外労働の上限規制」とは、具体的には、
1年間の時間外労働時間の上限960時間とするという内容です。

1カ月あたり、80時間ですから、20日稼働の会社であれば、1日あたり、
残業時間を4時間以内にしなければなりません。
残業時間を4時間以内にするということは、1日の労働時間を12時間以内
法定労働時間8時間+残業時間4時間)にするということです。

ここで注意しなければならないのは、法定労働時間を1日で見る視点と、
1週間で見る視点の両方が必要なことです。
法定労働時間は1日あたり8時間以内にしなければならないと同時に、
1週間では、40時間以内にする必要があります。

週休2日の会社であれば、1日あたりの法定労働時間だけ見れば良いのですが、
土曜日まで勤務している会社の場合は、1日12時間労働とすると、
月曜日から金曜日までの5日間で、法定労働時間の上限である40時間
(8時間×5日=40時間)に達しますので、月曜日から金曜日までの
5日間での残業時間は平日の20時間(4時間×5日)+土曜日12時間となり、
1週間で残業時間が合計32時間となります。2週間64時間3週間
96時間となり、3週目で、残業時間が80時間超えてしまいます。
つまり、1年間の時間外労働時間は、960時間を優に超えてしまうことに
なるのです。

また、1カ月の稼働日を25日で計算すると、1日あたりの残業時間を
3時間12分に押さえる必要が生じますので、1日労働時間
11時間12分以内にすることが求められます。
他業種に比べて長時間労働が常態化している運送業界にとっては、
相当厳しい規制です。しかし、守らないと違反となるのです。

運賃上げてもらわないと無理だという声も多いですが、まずは自社だけで、
どのような対策が打てるかということになります。対策としては、まずは、
売上を落とさずに、いかに無駄を省き、時間の効率化を図るかです。
それには、現状分析することですが、そのために避けては通れないのが
時間管理です。

時間管理の進め方は、毎日、点呼簿タコグラフ日報をチェックして
管理する方法です。

ある会社の進め方です。夕方から夜にかけて、乗務後点呼の際に、
ドライバーに日報とタコグラフを提出してもらいます。
書類を見て、車両が停止している間の時間(作業、休憩、荷待ち、休息)の
確認をします。おかしい点があれば、その場で本人に確認します。

その日は約30名のドライバーのチェックを行います。翌朝、1時間ほど
かけて、データの入力を行います。これを一人の管理者が毎日行っています。
1カ月後に全ドライバーのひと月分の時間管理のデータができ上がります。
毎日積み重ねです。

正確残業代などの計算ができますから、この会社では、労使問題
一切起こりません。高い運賃を出してくれる良い荷主をつかんでおり、
大変業績も良い会社です。
ポイントは、とにかく毎日欠かさず時間管理を行うことです。

運送事業者様のサポートをしている中で感じるのは、運送業界は、
時間管理苦手だということです。と言いますのも、時間管理を
しなくても、給与体系は機能しますし、仕事も回せます。
だから事業運営上、それほど時間管理は必要なかったのかもしれません。
しかし、これからは、時間管理を始めなくてはいけません。
導入時大変ですが、習慣化されてくるとそれほど面倒でなくなります。

各ドライバーの傾向もつかめてきて、変化にもすぐに気づくようになります。
今までやらなかったことを始めるのはしんどいことですが、続けていくと、
それ程苦にはならなくなるものです。時間管理をして、現状明らかになれば、
次は、無駄な時間の使い方をしているところを改善するのです。
作業に時間がかかるようであれば、作業効率化を図る必要があります。

また、一般道よりも高速道を使った方が効率化できるのであれば、
それも考えなければなりません。
例えば、高速を使っても、10分程度縮まるだけと思うかもしれませんが、
この10分がバカになりません。10分縮まる運行が、1日3運行あるとしたら、
1日30分短縮できます。ひと月の稼働日数が、20日間だとすれば、1カ月1
0時間
になります。1年間では、120時間時間短縮です。
960時間中120時間ですから、バカにならないのです(もちろん、
高速代金を誰が負担するのかという問題はあります)。

荷待ち時間が多いために労働時間が伸びているのであれば、荷主に交渉する
必要も出てきますし、無駄な作業を無料でやらされている場合等も同様です。
こういったことは、時間管理をして初めてわかることです。

ですから、まずは時間管理始めないと、対策打てないことになります!!

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