コラム
巡回指導対策 重要ポイント「過労防止にかかる部分」

巡回指導員や運輸局の監査でチェックする中で、
特に重要とされているのが過労防止にかかる部分です。
これは、点呼簿、タコグラフ、乗務記録の3つの帳票類で確認するのですが、今回はタコグラフについてです。
タコブラフ(タコメーター)は車両総重量7トン以上、または最大積載量4トン以上のトラックのみ装着の義務があります。
万一、該当する車両があるにもかかわらず装着していなければ、それだけで違反となります。
タコグラフは、車両に装着されたタコメーターにより、走行距離や時間、速度などの運行状況を自動的に記録したものですから、修正不可能な帳票類です。
巡回指導員は、このタコグラフを確認することにより、運行状況が適切かどうかを判断します。
適切かどうかの基準は次の通りです。
1.拘束時間・・・・1日16時間以内(15時間を超える日が1週間で2日以内)
2.拘束時間・・・・1カ月293時間以内
3.休息時間・・・・1日8時間以上
4.運転時間・・・・1日9時間以内(2日平均)
5.運転時間・・・・1週間44時間以内(2週間平均)
6.連続運転時間・・4時間運転で30分以上の休憩
7.休日労働・・・・2週間に1回以内
この中で、巡回指導員が特にチェックをするのは、
1.拘束時間・・・・1日16時間以内(15時間を超える日が1週間で2日以内)
3.休息時間・・・・1日8時間以上
6.連続運転時間・・4時間運転で30分以上の休憩
です。
まず、
1.拘束時間・・・・1日16時間以内(15時間を超える日が1週間で2日以内)
についてですが、
1 日の拘束時間は原則として13時間以内であり、延長する場合でも最大16時間が限度となっています。
ここでいうところの運転者の「1日」は
「始業時刻から起算した24時間」ですから、
始業(乗務前点呼)から24時間を見たときに
拘束時間が16時間以内に収まっているかどうかです。
たとえ1日でも収まっていない場合は違反となります。
なお、拘束時間とは、会社に拘束されている時間ですから、荷待ち時間や休憩時間なども含まれることになります。
また、細かいお話になりますが、拘束時間が15時間を超える回数は、1週間に2回が限度となっています。
ですから拘束時間が16時間以内だとしても、15時間を超える日が1週間のうち3日以上になると違反となってしまいます。
次に
3.休息時間・・・・1日8時間以上
についてですが、
休息時間は継続8時間以上必要となっています。
つまり始業(乗務前点呼)から24時間以内を見たときに連続した休息時間が8時間以上あるかどうかです。
なお、休息時間とは、業務から解放されている時間ですから、休憩時間や荷待ち時間は含まれません。
以上のことからもわかるように、拘束時間と休息期間は表裏一体のものであり、1日とは始業時刻から起算して、24時間をいうので、結果、
1日(24時間)=拘束時間+休息時間
という関係にあります。
拘束時間が原則13時間以内ですので、休息時間は原則11時間以上となります。
拘束時間を延長する場合でも、16時間が限度とされていますが、拘束時間が限度ギリギリの16時間の場合
1日24時間-拘束時間16時間=休息時間8時間
となり、
休息時間も限度ギリギリの8時間ということになるのです。
ですから、拘束時間が16時間を超えることになると、1日(始業から24時間)の休息時間は8時間に満たないことになりますので、拘束時間の違反に加えて、休息時間の基準も違反という扱いになってしまうのです。
休息時間は原則継続8時間以上必要ですが、分割休息を取ることもできます。
分割休息は継続4時間以上8時間未満の休息ですが、1日に合計10時間以上取ることが必要となっています。
ですから、分割休息の場合は、拘束時間は必然的に14時間以内
(1日24時間-分割休息10時間=拘束時間14時間)
でないといけませんので、業務時間を減らさざるを得ず、かえって業務に差し支えることになるかも知れませんので、適用には注意が必要です。
なお、デジタルタコグラフの場合、よく見受けられるのが、運転者の操作ミスです。
休息なのにスイッチを入れ忘れて、拘束時間になっているケースが結構あります。
各運転者が適正に操作しているのか時々確かめることが必要かと思います。
また、休息中に(トイレやコンビニの移動などで)少しだけ車両移動してしまい、休息時間が連続4時間に満たなくなり、休息時間のカウントとならずに、拘束時間の扱いとなってしまったり、出発をあと数分我慢していれば休息時間となったのに、早く運転を開始してしまい、
連続4時間に満たず、拘束時間の扱いとなっているケースが見受けられます。
帰庫した時にできれば毎回各運転者のタコグラフを確認した方が良いでしょう。
次に
6.連続運転時間・・4時間運転で30分以上の休憩
ですが、
前回(乗務記録について)でもお伝えしましたように、
○連続運転時間は4時間が限度
○運転4時間ごとに合計30分以上の休憩等の運転の中断が必要
○30分以上の休憩等は分割可能(ただし1回10分以上)
となっています。
以上の点を意識して、違反がないかどうかタコグラフを確認してみてください。
もし違反となっている場合は、運転者に改善指導をする必要があります。
巡回指導員は、タコグラフの保管管理状況以外にタコグラフを安全運行に活用しているかどうかを見ることがあります。
スピードの出し過ぎや、省エネ運転、上記のような休息時間の管理状況などの不備をタコグラフを見て、会社が指導しているかどうかです。
指導した痕跡が、タコグラフなどに残っているかを見ることがあるのです。
ある運送事業者ですが、タコグラフの記録・保存は適正だが、活用した痕跡がないので、
この項目は「不適」となったケースがあります。
タコグラフは、ただ保管するだけではなく、しっかり安全運行に活用することが求められているのです。