コラム
労働に関わる統計数字②
今回は、「労働関係の統計」について
ご紹介させて頂きます。
1.技能実習制度廃止後の新制度
本年2月、政府は外国人材の受け入れ・
共生に関する閣僚会議を開催し、技能実習制度、
並びに、特定技能制度のあり方について、
政府としての対応方針を決定しました。
現行の技能実習制度を廃止する一方で、
人材育成と人材確保を目的とする育成就労
制度が創設されることになります。
その受け入れ分野は、従前の特定技能の
特定産業分野を基本とし、技能実習対象職種の
実態を踏まえ、産業分野の更なる拡大を
検討することとなっています。
新制度では、従来の技能実習制度では
認められなかった本人の意向による転籍が
容認されることになり、その要件の一つである
「日本語能力」に関しては、新たな水準の
試験制度が導入されるとのことです。
また、同様に転籍要件の一つである「就労期間」
については、当初の受け入れ機関で1年以上
就労することを基本としながらも、当分の間は
各分野の実情を踏まえ、分野独自に1~2年の
範囲内で設定することが認められることになります。
本法案は今国会で提出されることになりますが、
人材不足が常態化している運送業界等では、
女性やシニア世代の活用などと合わせて、
人材確保の有効な手段となるやもしれません。
2.過去最少の出生数
今年2月に厚生労働省が公表した人口動態統計
速報によれば、令和5年の出生数は、前年の
79万9,728人から4万1,097人減少して、
75万8,631人になったことが分かりました。
これで8年連続での減少となり、過去最少も
更新しました。
その上、死亡者数は159万503人と
過去最多を更新し、差し引きの結果、自然減数が
83万1,872人となり、過去最大の減少幅と
なっています。
しかも、婚姻件数が前年から3万542組減の
48万9,281組となり、今後更に、少子化に
拍車が掛かるのではと懸念されています。
政府は、若年人口が急減すると予想される
2030年代に入るまでが少子化傾向を
反転させる重要な分岐点と捉えており、
こども未来戦略に基づく少子化対策を積極的に
進めていくとしています。
3.中小企業の賃上げ
日本商工会議所が今年2月に公表した、
中小企業の人手不足、賃金等に関する調査
結果によりますと、令和6年度に賃上げの
実施を予定している企業は、中小企業全体の
61.3%と6割を超える高水準となっており、
昨年度の58.2%から3.1ポイントの増加と
なっています。
このうち約6割(中小企業全体の24.4%)は、
業績の改善が見られないなかでも、賃金の
値上げを実施するとのことです。
こうした賃上げ実施の要因としては、「人材の確保・
採用」が8割近く(76.7%)に及び、続いて
「物価上昇への対応」が約6割(61.0%)と
なっています。
本調査は、令和6年1月に、中小企業2,988社を
対象に実施されたものですが、人手不足の深刻さが
如実となる結果となりました。
4.最後に
令和5年度の一般労働者の平均賃金は318.3千円で、
前年より2.1%の増加となっており、平成6年度の
2.6%増以来29年ぶりの高い水準となりました。
とりわけ、若年層での増加が顕著で、人材確保を
目的とした賃金の上昇を裏付ける結果となっています。
こうした傾向は今後も続くとみられ、中小企業の
経営を圧迫する要因ともなることから、政府を交えた
抜本的な改善方法の検討が急務と思われます。