コラム

新たな化学物質の規制

新たな化学物質の規制」についてご紹介
いたします。

1.労働安全衛生法の改正

本年4月より労働安全衛生法政省令
改正され、化学物質に対する規制が大きく
変わることとなり、規制の対象となる
化学物質が順次拡大されることになります。

その結果、接着剤芳香剤消毒剤などの
化学物質(製品)を使用する事業者や、
化学物質を用いた洗浄、清掃、駆除などの
作業をする事業者については、新たな法令に
基づく対応が求められることになります。

2.規制強化の背景

国内で、輸入、製造、使用されている
化学物質は数万種類にのぼり、その中には
実際に危険性や有害性が確認された物質や、
危険性があるとされる物質が多く含まれます。

ただ、これまでの法令による有害物質
としての規制対象は、僅か674物質
とどまっており、それ以外の化学物質の
管理については努力義務とされてきました。

そのため、化学物質を原因とする労働災害
年間約450件)の8割程度規制
対象外
の化学物質が原因となっていました。

しかも、化学物質を原因とするがん等
遅発性疾病による被害も、後を絶ちません

こうした労働災害の状況を踏まえ、
厚生労働省では、令和5年4月より
新たな化学物質規制の手法を導入し、
重ねて、令和6年4月規制対象
追加を実施することになりました。

国による分類が進む中、令和6年4月
新たに234物質追加され、引き続き、
令和7年4月には、約700物質が、
令和8年4月には、約850物質
順次追加されることになります。

3.事業者による管理

今回の改正で、事業者は、事業場内で
取扱う化学物質(製品)の全て
リストアップし、危険・有害性に関する
情報を確認しなければならなくなります。

危険・有害性に関する情報は、製品の
ラベル表示SDS安全データシート
から含有成分を確認することができますが、
製品のSDS情報が入手できない場合や、
その内容が十分でない場合などは、製品の
提供元直接問い合わせ、含有成分情報
などの開示を求めることも、時には必要と
なってきます。

こうした情報取集をもとに、事業場内で
取扱う化学物質について、労働安全衛生法で
リスクアセスメントの実施が義務付けられる
化学物質(リスクアセスメント対象物)」に
該当するか否かを、確認しなければなりません。

仮に、該当する物質を取扱っていることが
確認されますと、そのリスクを見積もり
その結果に基づくリスク低減措置の実施
などが求められることになります。

尚、リスクアセスメント対象物に該当して
いなくても、危険・有害性のある化学物質に
ついては、ラベル表示やSDS交付、
リスクアセスメントの実施が努力義務と
されますし、当然、これまで法令で
規制されていた物質も、引き続き適正
管理が必要となります。

4.最後に

リスクアセスメント対象物を製造、取り扱い、
または、譲渡・提供する事業者は、今回の
法改正で、適正な化学物質管理を行うための
体制整備が求められることになります。

具体的には、化学物質管理者保護具着用管理
責任者
選任等ですが、事業主の方にとって
経営上の負担増に繋がることは間違いなさそうです。

従業員の方の安全、安心を担保することは、
企業として当然の義務と言えますが、事業経営を
圧迫することなく、こうした法令がスムーズに
浸透し、履行されることを祈るばかりです。

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