コラム
運送業界の人手不足への対応①
運送業界には、様々な課題があります。
厳しく求められるコンプライアンスに対応できて
いない事業者が多いこと。
交通事故や労災事故が起きやすい業界であること。
未払い賃金の請求などの労働問題が起きやすい
業界であること。
慢性的な人手不足の業界であること。
価格競争に陥りやすい業界であることなどですが、
今回は、『運送業界の人手不足』について取り上げたい
と思います。
運送業界は、今、深刻な人手不足に悩まされています。
3K職場というイメージが定着していることもあり、
人がなかなか集まらないということがあるかも
知れません。
今回は求人に困っていない会社の事例について、
お伝えいたします。
まず一つ目の会社。その会社は三重県にあります。
この会社の特徴は、ドライバーの多くが20代である
ということです。
ドライバー全体の70%が20代であり、社員の
平均年齢は29歳です。
しかも求人には困っていないというのです。
この会社はどのようにして、この結果を創ることが
できたのでしょうか?
実は、今のような体制になったのは、ここ2年余り
だそうです。
2年前に始めたのは、SNSの活用です。
その中でも、TikTokです。TikTok は3分以内という
時間制限の中で、短い動画をアップロードする
コンテンツで、ユーザーは10~20代の若年層が多く、
その世代を中心に、ショートムービーをテンポよく
閲覧できることで流行しています。
社長は言います。SNSの拡散力は半端ないと。
日本全国から、求人の問い合わせが入ります。
実際、この会社のTikTokを閲覧して、九州と東京から、
求人に応募をしてきた20代の求職者を採用しています。
現在、TikTokは、月に3本ほどUPしていますが、
毎月平均3~4件の求人の応募があると言います。
TikTokのUPは若い社員に任せているのかと
思いきや、何とこの会社、60代の社長が、ほぼ一人で、
UPしています。
社長曰く、「そんなに難しいものではない。
誰でもできる」とのことです。
ただし・・と社長は続けます。
SNSを活用すれば、確かに若者を引き寄せることが
できる。
問題は、入社してみて、思っていた会社と違っている
と感じると、離職してしまうことです。
そうならないように、入社してきた若者が納得できる
良い会社にすることが一番肝心なことであると。
この会社の採用基準(ターゲット)は、20代の
未経験者です。
20代の経験者は、よく本人と話をして採用するか
どうかを決める(基本採用しない)。
30代の経験者は採用しない。
35歳以上になると、未経験者でも採用しない
というものです。
30年前に起業した時は、即戦力の経験者を
採用しましたが、その後、その社員たちに
悩ませられることになります。
経験者は素直さがないのです。社長が指示した
ことを素直にやってくれないのです。
この会社では、日常点検を朝と夕の2回実施
しています。
理由は、その日のうちに不具合が見つかれば、
次の日の運行までに対処できるからです。
しかし、経験者は、言います。「前職では、2回も
やらなかった。自分はやるのは嫌です」と。
経験者はさんざん文句を言って挙句の果てに辞めて
しまいます。
未経験者は、お願いしたことを「そういうもの
なんだな」と素直にやってくれる。
お客様に喜んでいただくために何をしなければ
ならないかを一番理解しているのは社長です。
しかし、それは、社員にとっては、やりたくない、
面倒くさいことが多いのです。
例えば、現場で元気に挨拶しろとか。お客様の
お困りごとを聞いてこいとか・・その考え方を
末端社員まで、浸透させようとしても、
経験者である中間管理職が邪魔をします。
中間管理職は部下に言います。
「社長が言っていることを自分もやりたくない。
やらなくていい」と。
以前いた№2、№3も経験者でした。
結局、社長とは考え方が合わず、他の社員を引き
連れて辞めてしまい、大変苦労されたそうです。
そのような経験を繰り返し、ようやく、20代の
未経験者を採用するという戦略にたどり着いたのです。
では、どのようにして、若者が辞めない、
若者が育つ会社にできたのでしょうか?
次回は「この会社が進めている若者が満足できる
会社とは?」についてお伝えいたします。