コラム
特定技能の在留資格に係る制度
今回は、「特定技能の在留資格に係る制度」について
ご紹介いたします。
1.基本方針等の変更
令和6年3月29日政府は、特定技能の在留資格に
係る制度の運用における基本方針等を一部変更すると
公表しました。
具体的には、特定技能の受入れ対象分野、いわゆる、
特定産業分野に自動車運送業、鉄道、林業、木材産業を
追加するとともに、令和6年4月から5年間の受入れ
見込み数を82万人まで拡大するというのです。
特定産業別では、工業製品製造業の17万3千人を
最多に、次いで、飲食料品製造業13万9千人、
介護13万5千人、建設8万人、などとなっており、
追加となった自動車運送業には、約2万5千人の
受入れを見込んでいるとのことです。
特定技能制度は、人材を確保することが困難な状況に
ある特定産業分野に限り、5年間の受入れ見込み数の
上限を定めたうえで、専門的な技能等を有する
外国人材を受け入れることができるという制度です。
令和5年度末に、前制度の5年間の期限が到来したため、
その後の対象分野の追加や受入れ見込み数の再設定等が
検討され、若干の遅れが生じたものの、今回の公表が
政府としての正式方針となりました。
併せて、基本方針には、受入れ見込み数の拡大に伴い、
地域住民の方々が不安を抱かれるなどの懸念事項も
あることから、受入れ企業の責務として、地域における
外国人材の共生社会実現に寄与すること等の条件も
盛り込まれています。
2021年時点で、トラックドライバーが84万人
(既に微減)と推計される自動車運送業界からすれば、
僅か3%に当たる受入れ数では、深刻なドライバー不足を
考えると、「焼け石に水!」との意見もあるようですが、
女性やシニア世代の活用と合わせて、人手不足解消の
一助になればと期待するばかりです。
2.外国人との共生に関する意識調査
法務省は、同じく令和6年3月29日に、外国人との
共生に関する意識調査結果を公表しました。
調査は、共生社会の実現に向けて、日本人の考え方などを
把握するために、令和5年10月に初めて実施されたもので、
18歳以上の日本人4,424人の有効回答をもとに、
取り纏められました。
調査結果によると、最近、日本で働いている外国人が
増加していると感じている人は、全体の6割以上
(62.4%)に及ぶ一方で、4割以上(41.7%)
の人が、外国人を受入れる環境整備が整っていないと
回答しています。
また、具体的に進んでいないと思うこととして、
「外国人材を受入れる企業等の環境整備」(58.1%)、
「外国人との共生社会の実現に向けた意識」(55.5%)
などが挙げられています。
3.在留外国人に対する意識調査
前述の意識調査の公表に加え、法務省は、令和5年度
在留外国人に対する基礎調査の結果についても公表
しています。
調査は、在留外国人及び外国人を受入れている機関、
企業等を対象に実施されたもので、企業等が、所属
外国人からの相談対応に必要だと感じるものとして、
「在留資格制度に対する充分な知識」(76.9%)、
「税金や年金など、外国人労働者に対する各種社会
制度に関する知識」(69.5%)、「語学力などの
コミュニケーション能力」(62.7%)といった
回答が上位を占めています。
一方、在留外国人が相談対応を行う人に望むこと
としては、「税金や年金など、各種社会制度に関する
知識」が6割を超え(61.0%)、最大の関心事と
なっています。
尚、本調査は、在留外国人6,154名、企業等
555社からの有効回答を、それぞれ集計したものです。
4.最後に
完全な島国で、海外との行き来が煩雑な日本では、
外国人を受入れることは、決して容易ではありませんが、
文化交流や優秀な人材の確保のためにも、外国人材を
受入れる環境整備が必要なのかしれません。