コラム
ハラスメントについて
今回は「ハラスメント」についてご紹介いたします。
1.カスタマーハラスメント
本年5月17日、厚生労働省は、令和5年度の
職場でのハラスメントに関する実態調査結果
について、同省で実施されている「雇用の分野に
おける女性活躍推進に関する検討会」への報告を
行いました。
その企業調査によると、過去3年間に顧客等
からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント
<略称:カスハラ>)について、従業員等から
相談があったとする企業が約3割(27.9%)
に上り、パワハラ(64.2%)、セクハラ
(39.5%)に次いで多いことが分かりました。
以下、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント
(10.2%)、介護休業等ハラスメント
(3.9%)、就活等セクハラ(0.7%)と
続いています。
過去3年間の相談件数の推移をみると、
カスハラの件数が増加したと回答した企業は
23.2%で、減少したと回答する企業
(11.4%)を上回りました。
また、それ以外のハラスメントでは、いずれも、
件数が「減少」という回答が、「増加」を
上回っており、カスハラだけが増加傾向にある
ことが伺えます。
その一方、企業の「カスハラ対策」はあまり
進んでいない様子で、ハラスメントに関する
雇用管理上の措置(例.相談窓口の設置など)
の実施状況では、パワハラやセクハラなどは
9割を超えるものの、カスハラは6割強
(64.5%)にとどまっています。
このほかの予防・解決のための取り組みも、
カスハラについては「特にない」が半数以上
(55.8%)を占め、次いで、「自社従業員が
取引先等からハラスメント被害を受けた場合の
取引先等への協力依頼」(13.9%)と
なっています。
他方、予防・解決のための取り組みを進める
うえで課題になることとして、「迷惑行為と
正当なクレームや要求を区別する明確な
判断基準を設けることが難しい」(25.9%)
などの回答が挙げられています。
本調査は、令和5年12月に従業員30人以上の
企業等を対象に実施され、7,780件の
有効回答をもとに取り纏められました。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は法整備も
視野に入れ、対策強化に取り組む方針を打ち
出しています。
具体的には、検討会を実施し、カスハラ対策を
論点の1つとする報告書を、今夏をめどに
取り纏めるというものです。
また、自民党の雇用問題調査会の対策PTも
本年5月16日、総理大臣にカスハラの総合的な
対策強化に向けた提言を申し入れており、
カスハラに該当すると考えられる一定の
範囲の明確化や、法整備などを念頭に置いた
労働者保護対策の強化、政府の支援強化などを
求めています。
2.就活等のセクハラ
厚生労働省が公表した実態調査の中でも、
就職活動中のセクシュアルハラスメント
(略称:セクハラ)は、全体の0.7%と、
決して高い割合ではありませんが、
過去3年間に就職活動をした者のうち、
セクハラを受けた経験があると回答した者が、
全体の約3割にあたることが分かりました。
時期としては、インターンシップ中が
30.1%で、それ以外の就職活動中が
31.9%とのことです。
行為者としては、インターンシップ先で
知り合った従業員(47.4%)、学校の
OB・OG訪問を通して知り合った従業員
(38.3%)となっており、就活生という
弱い立場の学生に対し、卑劣な行為を行う
事業者(それに従事する従業員)が後を
絶たないというのは残念でなりません。
尚、本調査は、2020年~2022年度
卒業で就職活動、或いは、インターンシップを
経験した男女1,000名の回答をもとに
集計されたものです。
3.最後に
厚生労働省が同日公表した、令和5年度の
女性活躍に関する調査結果によりますと、
女性活躍推進法に基づき積極的に情報を
公表している企業ほど、人材確保・定着、
職場環境等に好影響を及ぼしているとの
結果がでているそうです。
男女の区別なく、従業員がハラスメント等で
悩まされることのない職場環境を整備する
ことも、企業にとって重要な役割の一つと
言えるのかもしれません。