コラム
運送業界の人手不足への対応④
今回は、「求人に困っていない会社」の2つ目の
実例をご紹介いたします。
この会社の特徴は求人のメインターゲットを
高齢者に絞っていることです。
主に運送会社を定年退職したドライバーを再雇用
しています。
ほとんどの運送会社が若いドライバーを希望する中、
この会社が、高齢者を好んで雇用する理由としては、
まず、若年層は、危険でしんどい上に、給料が安い
トラックドライバーの仕事を敬遠する傾向が強く、
トラックドライバーの求職希望者の絶対数が少ない
という点が挙げられます。
若い人のドライバー離れに、免許制度がその要因の
一つとなっています。
4トントラックを運転するには、普通免許30万円、
準中型15万円、4トンの免許30万円と、多くの時間と
お金を投資する必要があり、若い人は、そこまでして
トラックドライバーになりたいとは感じないようです。
たとえ、運転免許を取得している若いドライバーが
求職活動をしていたとしても、ほとんどの会社が
若いドライバーを望んでいるわけですから、当然
競争になります。
一人の若いドライバーに対し、5社、6社が競合する
ことも日常的です。
勿論、求職者は、条件の良い会社を選ぶことになる
ので、若いドライバーを獲得するには、好条件を
提示する必要があり、大きな利益を上げている
会社でなければ、それはなかなか難しいでしょう。
また、ようやく入社してくれたとしても、
まだまだ人生、先の長い若いドライバーは、
働きながら、さらに好条件の会社を探します。
今は携帯で検索すれば、求人情報はいくらでも
見ることができます。
その結果、入社してすぐに転職するということも
珍しくありません。
つまり、若いドライバーほど仕事が続かない
というのもあながち間違いではないのです。
その点、多くの会社が敬遠する高齢ドライバーは、
なかなか職を探すのが難しいですから、
少々条件が悪くても喜んで、入社してくれる
傾向にあります。
要は、高齢の経験者は容易に雇用できるのです。
高齢ドライバーは、実績や経験がありますが、
年齢と共に視力、判断力、機敏性などが衰えて
くるため、定年になると肩たたきに会いがちです。
継続雇用される場合でも、一般的に給料は下がります。
ひどい場合は、現役世代の4割カット、5割カット
という場合もあります。
人生100年と言われる現代では、60歳以降も
働かなくてはなりません。
しかし、それだけ減給されると、同じ会社で仕事を
続けるのは難しく、退職せざるを得ないのです。
この会社は、ドライバー12名中、60歳以上の
高齢ドライバーが6名います。
離職率は、非常に低く、長続きしています。
高齢者は、数年しか勤務できないといわれますが
前述の通り、若い人も、転職するという形で、
僅か数年で退職するケースが多々見られます。
「それであれば、高齢者が、若い人と比べて、特別、
仕事が続かないというわけではない。
定年後、62歳、63歳の人をもっと積極的に雇用
した方が良い。」というのが社長の考えです。
社長は、若い人よりも、高齢者の方が安心して
仕事を任せられるとも言います。
高齢者に比べて、若い人の方が、事故率が高いと
言います。
高齢者は、年齢的な衰えを自覚しているため、
運転には慎重で、事故率が極めて低いのです。
また、仕事も丁寧で、ミスがないのも高齢者の
特徴です。
若い人は相対的に、仕事は早いが、丁寧さを欠き、
ミスが多く、運転も荒い。
そのため、高齢ドライバーは、仕事がとても丁寧だと、
荷主に喜ばれているとのことです。
高齢ドライバーは、仕事に喜びを感じてくれる。
人の役に立って、喜んでもらうことが何より
嬉しいと言ってくれるそうです。
私、高濱が取材でこの会社を訪れたときでした。
自己都合で、土曜日の配送ができなくなったと、
若いドライバーより、急に連絡が入ったため、
一か八か、その時、帰社した高齢ドライバーに
都合を聞いてみると、そのドライバーが、
それまで経験のなかった休日出勤を、嫌な顔
一つ見せず、「喜んで行かせていただきます!」と
二つ返事で、快諾するのを目の当たりにしたのです。
正に、人が困っているときに役に立ちたい。
そこに喜びを感じて、はつらつと仕事をしている
高齢ドライバーの姿がそこにありました。
ただ、やみくもに高齢ドライバーを雇用すれば
いいかと言えば、そうではありません。
次回は、長続きして、荷主に喜ばれる高齢ドライバー
採用のポイントについてお伝えいたします。