コラム

最低賃金(令和6年10月改正)

今回は「最低賃金」についてご紹介いたします。

1.最低賃金の引き上げ

令和6年7月25日開催の中央最低賃金
審議会
において発表された最低賃金
引き上げの目安金額を受け、この10月より
都道府県ごとに随時、最低賃金の引き上げ
行われました。

今年度の引き上げ額は、全国平均で53.2円
なっており、率に換算すると5.3%の上昇
なります。

この結果、最高額が東京の1,163円
最低額が秋田、熊本の951円となり、
全国平均では1,055円となりました。

ちなみに、1,000円を超えたのは17
都道府県で、1,100円超えは東京、
神奈川(1,062円)、大阪(1,114円)

3都府県のみとなっています。

中でも注目をあつめたのが、全国最高額となる
徳島の84円の引き上げです。

この異例の大幅改定に中小企業からは困惑の声が
上がっているようです。

最低賃金は、自営業者やフリーランスを除き、
パート、アルバイトを含む全ての雇用者に適用
されますので、自身の10月度の給与が改訂された
最低賃金を下回っていないかご確認されることを
お奨めします。

確認の方法としては、時給の方は別として、
月給の方は、基本給を月の所定労働時間で
日給の方は、その金額を1日の所定労働時間で
除して1時間当たりの給与単価を算出する
というものです。

雇用主が、最低賃金を下回る金額の給与を
従業員に支給していると、50万円以下の罰金
処せられる場合がありますので、万一、ご自身の
時給が、就業されている都道府県の最低賃金を
下回るようなことがありましたら、是非とも
雇用主の方にご相談下さい。

2.事業主の負担増

今回の最低賃金の引き上げが50円の都道府県に
あっては、企業に働く方の1カ月当たりの給与が
8,650円(50円×173時間/月)程度
上昇することになりますから、従業員が20名の
会社
では、1カ月当たり173,000円負担増
1年では2百万円を超える経費増となります。

東京商工リサーチが10月以前に実施した調査に
よると、10月以降に改訂される最低賃金よりも
低い時給を適用している企業が、全体の19.2%
なっており、当然ながら、それらの企業は賃金の
値上げに踏み切らざるを得ません。

それに加え、既に最低賃金はクリアしているものの、
これを機に賃上げを実施しようという企業が
21.1%に及び、両方合わせると4割超の企業が
賃上げを実施するということになりました。

無論、現在の物価高騰を考えると、今の最低賃金で
充分なのかという議論もありますが、多くの
中小・零細企業の経営者の方の立場からすれば、
政府としての企業支援等に期待したいところです。

3.社会保険加入との兼ね合い

令和6年10月以降、社会保険加入義務化の範囲が
拡大され、従来、従業員が101人以上の企業であれば、
①週の労働時間が20時間以上、②月収が8.8万円
(年収ベースでは約106万円)以上、の条件を満す
全ての方を社会保険に加入させることが義務付けられて
いましたが、その範囲が更に、51人以上の企業へ
広げられることになりました。

現在、第3号被保険者(配偶者の被扶養者)の方は、
全国におよそ700万人いらっしゃいますが、
その立場で就労されている方にとっては、
10月以降年収の壁の拡大と、最低賃金の
上昇
は悩ましい問題かもしれません。

というのも、年収がアップし103万円を超えると、
新たに所得税が発生し、更に、51人以上の企業で、
106万円を超えれば、配偶者の扶養から外れ、
健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料といった
社会保険料についても、自身で負担せざるを得なく
なるからです。

4.最後に

只、これを機に、第3号被保険者から、第2号
被保険者への転換を図るというのは如何でしょう。

会社の健康保険に加入すると、病気やけがで
休んでも給料の3分の2が「傷病手当金」として
支給されますし、厚生年金に加入しておけば、
老後の年金が増えるなど、けして悪いことばかり
ではありません。

そういう意味でも、女性の方、特に主婦層の方の
積極的な社会進出の足掛かりになればと願う
ばかりです。

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