コラム

運送業界の人手不足への対応⑤

前回に引き続き、「求人に困っていない会社」の
2つ目の事例の続きをお伝えいたします。

前回、この会社が、高齢者をターゲットとして
求職者を募集し、成功しているとお伝えいたしました。

この会社のドライバー12名中6名が60歳以上です。
高齢ドライバーは、若いドライバーに比べて、
判断力、機敏性などは劣りますが、その反面、
仕事は丁寧で、手を抜きません

また、運転には慎重で無理をせず、事故率が極めて
低い
という利点があります。

更に、高齢であるにもかかわらず雇ってくれた
という恩義を感じ、感謝して働いてくれます。

そして、この会社を辞めたら、他に行く処が無い
考えているので、わがままを言わず、素直に指示に
従ってくれるし、その年齢で人のお役に立てる
ことに喜びを感じて仕事をしてくれるのです。

若いドライバーの様に、もっと良い就職先を探して、
急に転職する恐れもほぼありません。
つまり、他社が若いドライバーをターゲットにして、
争奪戦を繰り広げている間に、豊富な高齢ドライバー
市場を独占できるのです。

そう考えると、高齢ドライバーを雇用することは、
そう悪くは無いのです。

多くの高齢求職者の中から、質の高いドライバー
選別すれば良いのです。

この会社では、高齢ドライバーを雇用するときの
ポイント
があります。

1つ目は、判断力、体力が衰えてきている高齢者に
長距離輸送は、事故のリスクがありますから、
地場輸送など、高齢ドライバーでもできる仕事の
確保が必要だという点です。

この会社では、長距離は50歳代までとしています。

当然、作業もできるだけ体力を要しない内容にする
ことが大切です。

とはいえ、現代の60代は、見た目も若く、体力的に
問題の無い人も多いと思います。

ですから、入社してから、案外、体力が必要な作業も
進んで、やってくれるケースが多いといいます。

2つ目に求人媒体はハローワーク一本です。

Indeedなどの求人サイトは、面接の予約だけ取って、
結局面接に来ないなど、良い人材の応募が意外と
少ないそうです。

また、求人サイトからくる求職者は、転職慣れ
している傾向があり、入社しても、気に入らない
ことがあれば、すぐにやめて次の仕事を探す
といったリスクがあります。

求職サイトの場合、携帯一つで、手軽に転職
できるため、それが、仕事が続かない原因の1つと
なっていると考えられます。

その点、ハローワークを通じて応募してくる人は、
わざわざハローワークまで足を運び、手続する
必要があり、それなりの手順を踏んで応募するので、
真面目で、良い人材が多いそうです。

3つ目に、人間性、経験を見極めるためには、
1回の面接で即決せず、面接は複数回行う。

時には1度の募集で、1日5~6件の応募が
あるそうです。

応募件数が増えれば、それだけ、焦らずに、
しっかり良い人材を見極めて採用することが
できます。

応募件数が少ないと、この人を逃したら後が
無いと、焦って、後々問題を起こすような人を
誤って採用することにもつながりかねません。

4つ目に、採用後の試用期間は、6カ月にするなど、
長めに設定し、試用期間中に仕事ぶりや、人間性を
よく観察することです。

試用期間中に、2回も、3回も物損事故を起こして
しまうようだと、仕事の適性に欠くことになるので、
退職してもらうのだそうです。

他にも、素直に指示通りに動かないなど、人間性に
問題があるかなどもこの期間に判断できます。

以上のポイントをクリアして、現在も残っている
高齢ドライバーは、仕事上、非常によく気が利き、
何事も進んでやってくれるし、社会のお役に立てる
ことに、喜びを感じてくれているそうです。

もちろん荷主の評価も高いとのことです。

高齢者は仕事ができないというのは単なる
固定観念かも知れません。

高齢者でも仕事のできる人はできるし、若い人でも
仕事ができない人もいます。

多くの高齢者市場から、自社に適した人を探せば
よいのです。

周りと同じように若い人材を求めていると、厳しい
求人獲得競争の世界で勝たなければならなくなる。

それよりも、人の気が付かない所に目を向けて
みると、そこは独占市場になっているということが
あります。

それは勿論、高齢者をターゲットにするという
ことだけではないかもしれません。

もっと違うところに目を向ければ、誰も手を付けて
いない求職者の市場があるかも知れません。

一度視点を変えてみてはいかがでしょうか?

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