コラム

ドライバーの労働環境改善に向けた動き

今回は、「ドライバーの労働環境改善に向けた
現在の物流効率化に対する国の動き」について
お伝えいたします。

トラックドライバーは、他の業種に比べて
長時間労働・低賃金の状況にあり(全産業に
比べ、労働時間は、約2割長く年間賃金
約2割低い)、その担い手不足が大きな問題と
なっているわけですが、その背景には、
荷主との交渉が難しい」、「不当に低い賃金で
運送する
者がいる」などを要因として、
必要なコストに見合った対価を収受できない
という実態があります。

労働時間が長時間に及ぶトラックドライバーの
労働環境の改善に向けて、働き方改革関連法に
基づき、令和6年4月から年960時間という
時間外労働の上限規制が適用されましたので、
各運送事業者が拘束時間短縮などの企業努力を
続けられている状況にあると思います。
とはいえ、時間を短縮すればするほど、
仕事数が減ることになり、売上と連動する
ドライバーの賃金を引き下げることに
つながり、稼げない運送業界の人材不足
拍車をかけることになりかねません。

ということは、時間短縮とともに、運賃を
上げて、賃金のレベルをキープする必要が
あるわけです。

このようなことを踏まえ、ドライバーの
労働条件の改善を図り、国民生活と経済を
支える持続的な物流の確保を図るため、
今、国は精力的に動いています。

近時では、2024年5月に物流関連二法
改正されました。

その中の一つ、流通業務効率化法は、主に
荷主に対する規制強化が目的であり、
もう一つの貨物自動車運送事業法については、
トラック事業者に対する規制的措置が目的と
なります。

その(規制的措置に関する)内容は、
➀元請事業者に対して、実運送事業者の
名称等を記載した実運送体制管理簿の
作成
を義務付ける、

②運送契約の締結等に際して、提供する
役務の内容やその対価(付帯業務料、
燃料サーチャージ等を含む)等について
記載した書面の交付を義務付ける、

他の運送事業者の利用(=下請けに
出す行為)の適正化について努力義務を
課すとともに、一定規模以上の事業者に
対して、当該効率化に関する管理規程
作成、及び、責任者の選任を義務付ける、
などです。

これらの規制は、令和7年4月から適用
されます。

➀と③については、運送業界が低賃金となる
原因の一つである下請け、孫請けといった
下請け多層構造にメスをいれる形です。

③については、運送事業者が、運送を
下請けに出す場合は、健全化措置(運送費用
の概算額を把握した上で申し込む。運賃が
概算額を下回る場合は、荷主への交渉を申出る。
2次下請けまでに制限する)を講じるという
もので、努力義務です。

これは、令和6年3月に改正された標準的
運賃の中で、下請け手数料運賃の10%
別に収受)を設定したことにも反映されて
いますし、令和6年6月に改正された
標準貨物自動車運送約款の第17条にも明記
されています。

➀の管理簿を作成し、下請けの次数が概ね
見通せれば、荷主との運賃交渉の段階から、
運賃とは別に手数料(運賃の10%)を交渉
(請求)することで、実運送事業者へ
運賃を割り引くことなく、適正に支払うこと
ができるというのです。

無論、多層になればなるほど、荷主が支払う
手数料の負担が増えることになるので、
多層構造の抑制(国としては2次下請けまでに
制限したい=業界の健全化)につなげたい
という意図があると考えられます。

ただ、この規制は③にあるように、
努力義務ですので、にわかに改善が
進むとは期待できないかもしれません。

しかし、業界改善の進捗状況によっては、
今後規制が強化されるのではと思われます。

②については、労働条件改善に向けて、
適正な運賃を収受するために、運送の
契約内容を明確に
するということです。

適正な運賃を収受するために必要不可欠な
ことが荷主との運賃交渉です。

国土交通省の調査では、2024年6月現在
運賃交渉を実施した事業者が全体の71%
であり、その内、希望額が収受できた
事業者が39%全体の比率では28%)、
一部収受できた事業者が36%(全体の
比率では25%)で、それ以外の事業者は、
運賃交渉したにもかかわらず、収受できな
かったとされています。

つまり一部でも収受できた事業者が
全体の53%、交渉したが収受出来なかった
事業者が全体の18%、交渉すらしなかった
事業者が全体の29%ということになります。

依然、荷主の協力が得られず、改善が
進まない状況
にあると言えるでしょう。

今、国は運賃料金の改善をあと押しする
ために、標準的運賃の改正、標準運送約款の
改正、公正取引委員会の施策(労務費の
適切な転嫁のための価格交渉に関する指針)、
トラックGメンの活動強化など様々な
動きを見せています。

これらの国が進める動きを活用しながら、
いかに運賃交渉を進めていくかが、
運賃交渉を成功させるカギになります。

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