コラム
人手不足への対応
今回は、「人手不足への対応」について
ご紹介いたします。
1.令和6年度版経済白書
弊社では、度々、人手不足への対応として、
各社の求人の成功事例などをご紹介して参り
ましたが、今回は、その人手不足を政府が
どのように捉え、どのように対応しようと
しているのか、昨年9月に公表された、
令和6年度版労働経済白書の内容をもとに
ご説明させて頂きます。
2010年代より、人手不足の傾向が継続
しており、高齢化や人口減少を背景に、
長期的に続くものと予想されています。
とりわけ、2023年における求人に対する
充足率は10.2%と、この半世紀で最も低い
水準となっており、女性、高齢者、外国人等
の多様な人材が活躍できる職場環境づくりが
急務となっています。
白書によると、日本ではこの半世紀の間に、
3度の人手不足を経験しており、具体的には、
①経済成長率が高く、人材の超過需要が主因
となった70年代前半、②雇用吸収力の高い
サービス産業が進展し、パートタイム労働者が
急増した80年代後半から90年代前半、そして、
③この2010年代以降とされています。
90年代のバブル経済崩壊後は、長らく不況が
続きましたが、2010年代以降経済の回復
とともに労働力需要が増加し、有効求人倍率は
1倍を大きく超え、失業率が3%を下回る
水準まで低下しました。
その結果、人手不足を感じる企業は、全国的に
広がりを見せ、その期間が長期化したことで、
求人に対する充足率も09年をピークに大きく
低下することとなりました。
今後も、人口の減少や高齢化などの影響で、
更に人手不足に拍車が掛かると見られており、
白書では、以前とは違った長期的で粘着的な
人手不足が続くと分析しています。
2.人手不足が賃金を上昇
現状の人手不足は、労働移動(転職)を促す
効果があり、特に、大企業間での労働移動や、
中小企業から大企業への労働移動が活発となり、
逆に、規模の小さい企業への労働移動は、
横這いか、低下傾向にあると言います。
白書では、人材不足と賃金上昇率、生産上昇率
との相関関係も分析しており、国際的に見て
日本は、欠員率に対する賃金上昇率は反応度が
高いものの、生産性上昇率と賃金上昇率の
相関関係は低いことが分かったとしています。
(つまり、儲かっているからといって賃金が
上がるのではなく、人手不足の時の方が、
賃金上昇に繋がるというもの)とは言え、
生産性が上がらない状況で、労働力を確保する
ために賃金を上昇させていては、企業経営は
成り立ちませんので、一人当たりの労働生産性を
向上させ、持続的な賃金向上を図ることが
重要であると白書は強調しています。
3.女性等の就業率が高水準
近年は、女性、高齢者、外国人の就業者の
増加が著しく、中でも、女性の就業率は
2022年には79.8%となり、女性活躍が
進む北欧諸国と遜色ない水準となっています。
また、正規雇用の比率も若い世代を中心に
上昇し、育児休業取得後の就業継続率も
上昇しています。
しかし、出産・育児等によりキャリアを
中断してからの就労参加は、依然として
非正規社員が中心であるほか、女性の
フルタイム労働者の中で、キャリア中断により、
40歳以降賃金格差が生じることも顕著な
傾向となっています。
一方、高齢者の就業率も国際的に高水準に
あり、65歳以上の就業率は2023年に
約25%となり、OECD諸国の中で、
韓国、アイスランドに次ぐ高い水準と
なりました。
年齢層別では、60~64歳の就業率は
70%超、65~69歳の就業率も50%超と、
この半世紀で最高の水準となっています。
また、外国人労働者については、ベトナム人を
中心に、在留資格「特定技能」等で就労する
外国人が増加傾向にあります。
4.最後に
白書では、今後の人手不足に対応するため、
潜在的な労働力(就業希望のない無業者等)
についても分析を行っており、育児や介護
などを理由に就業希望がなく、求職活動を
行っていない女性を労働市場に参入させる
ことが重要であるとしています。
それには、女性の負担軽減に向けた社会支援は
勿論のこと、男性が家庭内で責任を果たせる
ような柔軟な職場づくりが不可欠と言えそうです。