コラム

荷主事業者への運賃交渉のポイント

今回は、「荷主事業者への運賃交渉のポイント
についてお伝えいたします。

トラック運送業は、他産業と比較して、
長時間労働・低賃金の傾向にあり、
運転従業者数が減少しています。

ドライバー不足による物流の停滞を
引き起こさないために、物流二法の改正
標準的運賃の改定標準運送約款の改正
トラックGメンの活動強化公正取引
委員会の価格交渉の指針
の策定など、
今、国は様々な施策を打ち出しています。

国の後押しがあり、荷主事業者にも
運送事業者への対応改善の必要性の
理解が広まりつつある今こそが、
運賃交渉の絶好のチャンスです。

そこで、今回は運賃交渉のポイントに
ついてお伝えいたします。

(ポイント①)客観的数字に基づき、
根拠を明確にすること。

金額の根拠が示されないと、荷主としては、
相談に応じられず、検討のしようがありません。

結果、必要な運送コストが反映されないまま
新運賃が決まることになります。

運賃交渉の基本は原価計算です。

車両ごとの変動費である運行費(燃料・油脂費、
修理費、尿素水費、タイヤチューブ費など)と
固定費である車両費(車両購入費、リース代)、
税金(自動車取得税、自動車重量税、自動車税)、
保険料(自賠責保険、任意保険)、人件費
(ドライバーの給与、法定福利費、福利厚生費
など)、一般管理費(役員、事務員の人件費、
備品・消耗品費、通信費、事務用品費などを按分)
を割り出し、変動費の1㎞あたりの数字に運行
ごとの平均走行距離をかけたもの、及び、
固定費の1時間あたりの数字に運行ごとの
平均稼働時間をかけたものを算出し、それらを
合計すれば、1運行ごとの原価計算ができます。

それらの原価に適正利益を加えたものが、
必要な運賃の金額となります。

現状の運賃の額がそれよりも低ければ、
運賃交渉をしなければならないのです。

(ポイント②)公正取引委員会の「労務費の
適切な転嫁のための価格交渉に関する指針
(romuhitenka-2.pdf)を活用する。

この指針は、調査の結果、原材料価格や
エネルギーコスト(燃料費の値上がり)に比べ、
運賃への労務費の転嫁が進んでいないことから、
発注者・受注者双方の立場からの行動指針
定めたもので、本指針に沿わないような行為を
することにより、公正な競争を阻害するおそれが
ある場合には、厳正に対処するとしたものです
(社名を公表、原状回復措置、損害賠償勧告など)。

具体的には「発注者側からの定期的な協議の実施」、
要請があれば協議のテーブルにつくこと」などが
明記され、取引開始以来、長年価格改定が行われて
いない場合や、取引上の立場が弱い受注者からは、
労務費の転嫁の協議を求めると契約打ち切りなど、
不利益を受ける恐れがあり、価格交渉を躊躇する
場合などの対策として、本指針は対応しています
(発注者として協議のテーブルにつかなければ
ならない)。

また、指針の一つに「説明・資料を求める場合
公表資料とすること」というのがありますが、
これは、受注者のコスト構造を明らかにする資料の
提示を求められたが、明らかにしたくない場合や、
労務費の上昇分は、受注者の生産性や、効率性の
向上を図ることで吸収すべき問題であるなどと
指摘された場合に、自社の実際の労務費ではなく
最低賃金の上昇などの厚労省の統計などの公表資料を
用いて提示すれば、これを合理的な根拠のあるもの
として尊重しなければならないということです。

ですから、ポイント①にあるように原価計算により
自社の労務費を提示しなくても、公表資料により
(燃料、物価についても公表資料はあるので活用可)、
交渉した場合は適正かつ合理的なものという扱いに
なります。

給料を上げないとドライバーがいなくなるなど、
切迫した状況を伝えることと、本指針を見せながら、
こういうことが書いてありますのでよろしくお願い
しますと価格交渉することが、大切です。

(ポイント③)改定された標準的な運賃
(202410unchin.pdf)を活用すること。

令和6年3月標準的運賃が改定されました。

荷主等への周知・徹底強化とともに、①車両費や
タイヤ費などの物価高騰分や燃料高騰に伴う費用
②荷待ち・荷役に係る費用、下請けに発注する際の
手数料
も含めて、荷主に適正に転嫁できるよう、
見直しを図ることとされました。

具体的には、物価高騰を考慮して、平均8%の
運賃引上げ
燃料費の基準価格を120円に変更し、
燃料サーチャージも120円に変更、現行の待機時間料
に加え、積込料・取卸料の水準を提示、有料道路
利用料を個別に明記、下請け手数料を設定
運賃の10%別に収受)などです。

ポイント①、②の手順で希望する運賃を提示する際に、
物価の高騰等を考慮して作成された標準的運賃では、
この金額となっていますと提示するのは有効な
運賃交渉の進め方の一つです。

(ポイント④)トラックGメン(fs-yu162.pdf)を
活用する。

トラックGメンとは、適正運賃の収受や労働環境の
改善を実現し、2024年問題の解決を目指すため国交省が
創設した専門部隊で、運賃・料金の不当な据置き、
長時間の荷待ち、契約になかった付帯作業の強要など、
違反原因行為の疑いのある荷主・元請事業者に対して
「働きかけ」や「要請」等の是正指導を行っています。

運賃交渉に全く取り合ってくれない荷主がいた場合は、
トラックGメン(運輸支局に在中)に相談するのが
有効です。

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