コラム

今後の運輸行政

今回は、「今後の運輸行政」について
お伝えいたします。

はドライバー不足による物流の停滞を
引き起こさないために、物流二法の改正
標準的運賃の改定標準運送約款の改正
トラックGメンの活動強化、公正取引員会の
価格交渉の指針の策定など、様々な施策を
打ち出しています。

物流二法改正の関係では、この4月から、
実運送事業者を明確にするための
元請事業者による運輸管理簿作成義務
運送契約書の書面交付義務がスタートします。

なお、運送契約の書面化については、
データ上の書面交付でも可能となって
いますが、次の5つを必要記載項目として
盛り込むことが義務化されます。

①運送契約当事者の名称と所在地
②運送の役務の内容及びその対価
③運送の付帯業務の内容とその対価
④有料道路の通行料金と燃料サーチャージ
などの特別な費用
⑤運賃・料金の支払い方法
⑥書面交付の年月日

4月から始まるこの2つの義務化は、
発注時点で運賃を明確にし、また、
下請け多重構造を改善することで、
適正運賃の収受につなげ、それにより、
ドライバーの賃金を上げ、労働環境を
改善するというのが狙いですが、
今後は、運送事業適正化に向けて、
さらに踏み込んだ施策が展開される
見通しです。

今後の運輸行政の動きとして、注目
されているのが、今国会(3月中の
通常国会)での成立を目指している
事業許可5年更新制度の運用を
盛り込んだ貨物自動車運送事業法の
一部改正と適正化競争推進特別措置法の
立法化です。

改正の主な内容は、以下の通りです。
①トラック運送事業の許可に5年間の
 有効期限
を設け、許可新制度を導入
②トラック運送事業者が標準的運賃
 収受するための法的根拠の付与
下請け原則2次まで
④荷主による白ナンバートラック
 利用を違反行為に加える
⑤Gメン通報への報復行為禁止措置

①の更新制度の導入については、
コンプライアンスを遵守せずに、
安売り前提で運送事業を行ういわゆる
質が悪いとされる事業者を排除して、
良質な事業者適正運賃で、適正競争
行う業界にしていくことが目的です。

なお、平成17年から、貸切バスが
先行で更新制度を導入していますが、
貸切バスで更新できるか否かの基準の
ひとつに、事業収支の適否があります。

具体的には、許可(更新)を申請する
直近1事業年度において、債務超過であり、
かつ直近3事業年度が連続で赤字である
場合は更新ができないことになっています。

また、従業員に最低賃金が支払われて
いない
場合も更新はできません。

下限運賃(貸切バスは下限運賃が設定
されています)を下回る低運賃で受注
している事業者は、財務状況が悪いため、
安全コストを賄えず、法令が遵守できない
傾向にあるため、このような基準となって
いるわけです。

トラック運送の更新許可の場合も同様の
基準が適用される可能性が高いと考え
られます。

財務状況が悪い事業者は、今のうちに、
経営状況を立て直しておく必要がある
ということです。

②は、標準的運賃を収受するための法的
根拠を付与することで、荷主と対等な立場で
運賃交渉
を進めていける環境を作るという
狙いです。

③は、下請けを「2次まで」と規制を
かけることで、低運賃の原因となっている
下請多層構造を打破することが目的です。

④は、更新できず、白トラとなった事業者に、
荷主が、引き続き低運賃で運送依頼をする
ことがないようにするための措置です。

⑤は、優越的な立場を利用して運賃・料金の
不当な据置をしたり、長時間の荷待ちを
改善しないなど、適正な取引を阻害する
疑いのある荷主への改善指導を行っている
トラックGメンに対して通報したトラック
事業者に、荷主が発注停止等の報復措置
行わないようにするための措置です。

以上のような更新制度等が立法化されれば、
低運賃で受注し、収支が取れず、法令が
遵守できない事業者は、淘汰されていく
ことになります。

更新制度の立法化から、実際の運用までは、
3~5年の猶予期間があると言われていますが、
今のうちに、運送品質を高めて、適正運賃を
収受し、財務状況を改善していくことが、
生き残るための重要なポイントとなります。

一覧に戻る