コラム
今後の運輸行政②
前月は概要をお伝えいたしましたが、
今回、具体的な運用方法と違反した場合の
罰則についてお伝えいたします。
今回の法改正で、トラック運送事業者に
直接関係するのは、運送取引に関する
二つの規制的措置です。
(1)運送契約時に提供する役務の内容や
その対価(附帯業務料燃料サーチャージ
等を含む。)等について記載した書面の
交付の義務付け。
(2)元請事業者に対し、実運送事業者の
名称や請負階層等を記載した実運送体制
管理簿の作成の義務付けと、実運送体制
管理簿の作成に必要な情報の通知の
義務付けです。
この二つの規制の意味は、国民生活・
経済を支える社会インフラである物流
業界が2024年問題(物流産業を魅力ある
職場とするため、働き方改革に関する
法律を適用)に直面することにより、
その停滞が懸念されている今、何も
対策を講じなければ、輸送力不足に
陥る可能性があるため、物流の効率化、
商慣習の見直しなどの抜本的・総合的
対策が必要となり、その一環として、
今回の法改正により、物流業界の多重
下請構造の是正につなげるとともに、
実運送事業者の適正運賃収受を図る
ということです。
これらの対策を進め、多重下請構造を
是正し、質の高いトラック事業者が
適正運賃を収受できるようになれば、
労働者の労働環境、待遇面は改善され、
より魅力ある業界として、将来起こりうる
輸送力不足を回避できるというのです。
規制(1)の運送契約時の書面交付義務
について、交付書面の記載事項は、
①運送役務の内容・対価、
②運送契約に荷役作業・附帯業務等が
含まれる場合には、その内容・対価、
③その他の特別に生ずる費用に係る
料金(例:有料道路利用料、燃料
サーチャージなど)、
④運送契約の当事者の氏名・名称及び
住所、
⑤運賃・料金の支払い方法、
⑥書面の交付年月日
ですが、真荷主(利用運送事業者等)と
トラック事業者が運送契約を締結する
ときは、相互の書面交付が、又、トラック
事業者等が利用運送を行うときは、
委託先への書面交付が義務となります。
交付書面は、メール等の電磁的方法でも
可能であり、基本契約書が交わされている
場合は、その基本契約書に記載されている
内容については省略できるものとされて
います。
なお、交付した書面は1年間保存義務が
あります。
違反した場合の罰則は次の通りです。
運送契約締結時の書面交付義務違反
1.書面の交付について、
①交付なし5件以下・・・警告
②交付なし6件以上15件以下・・・10日車
③交付なし16件以上・・・20日車
2.交付書面の写しの保存について、
①一部保存なし・・・警告
②全て保存なし・・・20日車
次に規制(2)元請事業者に対する実運送
体制管理簿作成の義務化についてです。
実運送体制管理簿(以下「管理簿」という)
の作成の対象となる貨物の重量は1.5トン
以上とされています。
管理簿の記載事項は次の通りです。
①実運送事業者の商号又は名称、
②実運送事業者が実運送を行う貨物の
内容及び区間、
③実運送事業者の請負階層
なお、元請事業者とは、階層の中で最も
上位に位置するトラック事業者のことです。
元請事業者をはじめとして、各事業者は
直下の事業者に対し、管理簿の作成に
必要な情報の通知が義務付けされます。
情報の通知の内容は次の通りです。
①元請事業者の名称・連絡先、
②真荷主の名称、
③相手が何時受けか
そして最終的に実運送を行ったトラック
事業者は、
①実運送事業者(自社)の名称・商号、
②運送区間、
③貨物の内容、
④何次受けか
元請事業者は、その内容を管理簿に記載し、
保管するというものです。
なお、管理簿は、荷主(真荷主)ごとに
作成する必要があります。
また、1年間の保存義務があります。
違反した場合の罰則は次の通りです。
1.実運送体制管理簿の作成
①作成なし5件以下・・・警告
②作成なし6件以上15件以下・・・10日車
③作成なし16件以上・・・20日車
2.記載事項等の不備・・・警告
3.実運送体制管理簿の備え置き
①一部備え置きなし・・・警告
②全て備え置きなし・・・20日車
4.実運送体制管理簿に係る通知義務違反
・・・警告
以上、これら二つの規制的措置については、
今後、巡回指導、運輸局監査などでも指摘
対象項目となるでしょうから、事務作業が
増えて大変ではありますが、対応を進めて
いく必要があります。
尚、これらの規制に関するパンフレットを
ご案内いたしますので、ご確認ください。