コラム

求人対策に成功している会社の実例

帝国データバンクが2025年4月4日に公表した、
2024年度の人手不足動向調査の結果によると、
従業員の退職や採用難、人件費高騰などを
原因とする人手不足倒産(法的整理、負債
1000万円以上)は350件と過去最多でした。

集計開始以降、最多となっていた前年度の
数字(313件)を上回る結果となりました。

業種別では、建設業が111件と最も多く、
次いで多かったのは物流業の42件でした。

両業種ともに以前から深刻な人手不足の
影響による倒産が多発しています。

私どものお客様の中でも、人手不足を
一番の課題に挙げる会社が多い状況です。

そこで今回は、『求人対策に成功している
会社の実例
』をご紹介したいと思います。

昨年9月号~11月号にかけて2例、ご紹介
致しましたが、今回は3例目のご紹介です。

その会社は、茨木市にある食品輸送の会社
です。

各食品会社が積み残した小口の商品を
積み合わせて輸送しています。

車両数約50両、従業員数は約100名で、
一時保管用の自家用倉庫も保有しています。

この会社には製造業、介護事業などの
他業界から来る未経験ドライバーが多く
在籍しています。

「未経験者大歓迎」と求人募集をかけると
ハローワークはたくさんの求職者を紹介
してくれます。

なぜかと言えば、本当に未経験者を採用し、
育て、一人前にしているからです。

その実績をハローワークは評価している
のです。

他社は未経験者歓迎と言いながら、
即戦力を求めます。

その結果、採用してはくれたが、無理
やった、辞めた!これでは困るわけです。

ハローワークは、一旦採用したら、
最後まで面倒を見てくれるこのような
会社を求職者に勧めます。

求職者には必ず見学会をし、トラックに
添乗もさせます。仕事をするイメージが
沸くからです。

これは採用後に、仕事が合わず、求職者が
困らないようにという意味もあります。

採用前なら、今の勤務先を辞めずに済む
からです。

やる気のある人なら年齢を問わず採用
しますから、中高年を採用することも
あります。

稀に年配で、「この人アカンな」という
人がくる。

「悪いが満額は払えないけど、その分
仕事を少なくするので、30万円ではなく
25万円で・・」数%ですが、そういう人も
いるようです。

『そういった人を切るやり方もあるが、
ウチはそういうことはしない、やる気が
あるのだから。

その人に合うような仕事を与えてあげる。
何か月も、何年も仕事をしていると、
そこそこ一人前になる。
できるだけ長く雇用するのが会社の方針。

失敗しても多めに見ながら、大事に
育てていけば、仕事は覚えていく。
そういう思いで一人一人を育てている。』
と社長は言います。

70歳を超えるドライバーが在籍していて、
運転が危なくなってきたので、これから
どうするのか尋ねたところ、仕事は続けたい
という。

倉庫の仕事も危険なので、その人のために
新たに一つ仕事を作ろうと思っている。

その仕事は利益が出なくてもいい、
その人の給料分だけ、売り上げがあれば
いいと言います。

なかなかここまで、従業員一人ひとりの
ことを親身に考える会社はありません。

社長は言います。運送業界に来る人は、
いろいろな会社を経て、来る人が多い、
多くが収入面でランクダウンしている。

その人たちが安心して働ける受け皿となる
業界にしなければならないと。

社風としては自由で、風通しが良い雰囲気、
責めるとか、詰めるとかしない。居心地が
いいという人もいる。

今の社風ができたのは、10年以上前に
経営理念を作成した時からだと言います。

経営理念を作る前は、赤字会社でした。
頑張って仕事をしているのに利益が出ない。

分析してみると、利益が出ない運賃で
走っていたことがわかりました。そこで、
各荷主に運賃の値上げを申し出ます。

すると、断る会社と、値上げしてでも
輸送してほしいという会社に二分しました。

その後、後者の荷主のためにサービスを
充実させます。それにより、翌年度には、
赤字がなくなり、更に次の年には、大きく
利益が出るようになったのです。

その転機となったのが経営理念の作成です。
きっかけは顧問税理士を変えたことです。

以前の税理士は、とにかく資金を借りて
事業を回しなさいという方針でしたので、
銀行の融資枠がいっぱいになると、社長の
個人財産もすべて拠出し、その後は親戚中
からお金を借りて回るという有様でした。


税理士を変えてからは、経営の分析をする
ようになりました。そして、税理士から
聞かれました。

この会社に経営理念がありますか?と、
そして、経営理念ができてから会社は
大きく変わりました。

次回は、経営理念作成後、どのように
会社が変わり、求人対策につながったかを
お伝えいたします。

一覧に戻る